■ はらだみずき 『最近、空を見上げていない』
角川文庫 520円+税
角川文庫 520円+税
著者は1964年千葉県生まれ。『サッカーボーイズ』(角川文庫)シリーズで人気。
2009年『赤いカンナではじまる』(祥伝社)。営業マンTさんからこの作品に出てくる本屋が「三宮ブックスでは?」と教えてもらって読んだ。立地場所だけはそのようだが、登場人物のモデルはいない。第一“恋愛小説”にあそこは似合わない。20年働いた私が言うのだから間違いない。
本書はその『赤いカンナではじまる』収録分に新作『最近、空を見上げていない』を加えて文庫化。
営業マン・作本が語る「本屋」を舞台にした話。はらだも元営業マン。
編集・水野が作本に相談に。普段は会議でしか話をしない。それぞれ「責任者的立場にあるのに、関係に隔たりがある」。
水野が担当した野鳥観察入門書の著者が「本屋に著書がない」と申し出で。それも千葉県の小さな本屋を指名して。売れている本ではない。部下ナカムラに営業訪問させる。しばらくしてその本屋から客注が入るが、ナカムラは気づかない。作本が本屋に電話をすると、以前にも客注があったとわかり平積みを頼んだ。ナカムラに営業の心得を指導したうえで、POPを描かせて本屋に送った。
またしばらくして追加注文。売れる理由は? 著者の知り合いがいるのか? 著者は東京在住。作本はナカムラと本屋に出向き店主と話をして、意外なことがわかる。著者はそこの出身。その店とも関わりがあった。マチガイを犯したことも。
帰り道、小鳥が二人の頭上を飛んだ。空を仰いだ。
本の「あとがき」には、故郷では鳥をたくさん見た、今は都会暮らしが続いて「ある日突然、鳥が見たくなって空を見上げた」と。彼は昔の仲間にあの本屋で買ってくれるよう頼んでいた。
作本とナカムラは他の本屋にも営業、丁寧に説明して注文を伸ばした。ナカムラはPOPをたくさん描いた。紹介文は作本。「あとがき」のあの言葉を使った。
この本のおかげで編集と営業の壁も少し低くなった。
1冊の本が果たす役割は小さくても暖かい。
◇ 『ほんまに』表紙決定
絵はゴローちゃん。モデルはバイト君OGのNさん。場所は【海】2階事務所ゾーンの屋上、3階屋上から見た図。
◇ NR出版会HP NR版元代表インタビュー
「本の力に、いまでも夢を持っている」 新幹社 高さん
(平野)