■ 髙村薫 『空海』 新潮社 1800円+税
阪神淡路大震災後、髙村は仏教世界を題材にしている。
《……長らく近代理性だけで生きてきた人間が、人間の意思を超えたもの、言葉で言い当てることのできないものに真に直面し、そのことを身体に刻んだのだ。以来、手さぐりで仏教書をひもとき、仏とは何かと考え続けて今日に至っているが、それでも信心なるものにはいまもなお手が届かない。》
本書は「二十一世紀の空海の肖像を探る旅」。髙村はまず東日本大震災の被災地に向かい、「弘法大師・空海の残像と人びとの祈りの風景」に触れる。
目次
千二百年の時空を遡る 私度僧の時代 入唐 空海、表舞台に躍り出る 二人空海 空海、弘法大師になる 高野浄土 祈りのかたち 再び高野へ 終着点 終わりに 特別対談 松長有慶
《……この半世紀の間に空海研究は進んだけれども、私たち日本人一般にとって空海がいまなおとらえどころのない存在であるのは、いったいなぜだろうか。いまどき、空海が高野山の奥之院の御廟で生きて修行を続けていると信じている人間などいないにもかかわらず、なぜその有り難みは無くならないのか。二十一世紀のいま、お大師さんとともに四国霊場をめぐる人びとは弘法大師に何を求め、何を得てゆくのか。学者や宗教者の手になる数多の研究とは別に、二十一世紀を生きる一日本人にとっての、二十一世紀の等身大の空海像を捉えたいと切に思う。空海を訪ねて日本各地をめぐる旅は、おそらく私たち日本人の信仰のかたちをめぐる旅になるはずだ。》
(平野)
小学生のとき、祖母が高野山参りのみやげに、お大師さん伝説満載の絵本を買ってきてくれた。信仰の話だけではなく、温泉や石油発見の話もあった。本書目次の「二人空海」が気になる。
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