■ 『現代思想 10月臨時増刊号 総特集=鶴見俊輔』
青土社 1500円+税
黒川創(『思想の科学』元編集者で作家)の話から。
《 今は「編集者」というのは、ひとつの堅気の職業だと思われてる。だけど当時の「編集者」は、文字通り編集している人だというだけのことで、給料が出ているとは限らない(笑)。鶴見さんも、そう。あの人は一九四六年に『思想の科学』を創刊して以来、九六年に休刊するまで、五〇年間、ずっと無給の編集者です(笑)
……鶴見さんにとっては、政治的な抗議行動と同じく、編集もひとつの具体的なアクションであって、それ自体が彼の思想家としての実践だった。哲学者、思想家の本来の仕事というのは、論文を書いたり、講演したりということではない。むしろ、彼にとっては編集という具体的な行為こそが、自分の哲学のありかただったということでしょう。》
《……鶴見さんは「ガリ版でも出します」と答えたそうですが、それを聞いた都留さんは「『思想の科学』は財産だから、ガリ版はよくない」と言って、勁草書房の社長だった井村寿二から、銀座のデパートの一室と一〇〇万円を借りるという話を仲立ちしてくれた。それが六二年春の思想の科学社を設立しての自主創刊につながる。》
鶴見は1970年に大学を辞めた後、家庭の「主夫」(料理はできないので自称「主夫見習い」)でもあった。
「主夫の役割は連れ合いが持ち帰ってくる職場での愚痴を聞くことなんだ」
「家事労働には終わりというものがないから、もしお互いの関係が悪ければ、すごい苦痛を伴うものになってしまうだろう」
私も「主夫」(料理はする、失敗ばかりだが)の立場。鶴見のことばはそのとおりで、肝に銘じておきます。