■ 山崎ナオコーラ 『かわいい夫』 夏葉社 2015年12月刊 1700円+税
ナオコーラさんの小説『昼田とハッコウ』(講談社、2013年)は「夫」=書店員をモデルにしている。雑誌『ダヴィンチ』(2013.11月号)に発表した『昼田とハッコウ』スピンオフ作品では海文堂のことにも触れてくれた。それより何より、海文堂廃業前に夫妻が訪問してくださった。「夫」は海文堂の見取り図を手描きして、フリーペーパー「海文堂の伝言」を作ってくれた。私はナオコーラさんにサインをもらった。色紙も保存している。
本書は西日本新聞連載と書き下ろしのエッセイ。オノロケエではないので、安心(?)して読んでほしい。《私の夫はかわいい。》
いきなり書きます!?
《顔がかわいいのではなく、存在がかわいい。ざしきわらしのようだ。
それで、エッセイを書くことにした。》
自慢話ではないし、二人はお金持ちでも美形カップルでもないので、ナオコーラさんも「安心して」と断わっている。
お互いを大切に思い尊敬し合っている。家族を大事にしている。作家の仕事はたいへんでしょう。私生活で辛いこともありましょう。でも、「夫」といっしょならきっと……と外野は無責任に思えてしまう。「夫」をかわいがってあげてください。「弱い人」
夫は「ひょろひょろしていて、肉体労働できなさそう」だし、「人からの命令に従ったり、あるいは人を下に従えたり」のタフな人間づき合いも不向き。兵士・戦争には向かない。自分も戦争になったら精神が崩壊するだろう、運動能力は低い、規律を守るのも苦手。でも、
《……私は、夫や自分のような、「戦時下においては無能」とされるような人間の価値を守っていきたい、と思う。(中略)ただ、私は、くだらないことを延々と書くような小説を発表していきたい。弱い作家が弱い話を書くことが仕事になる幸せな時代を噛み締めたい。》
(平野)
家族が読み終わって回してくれた。カバー、みつはしちかこ『チッチとサリー』。オッサンは自分で買う勇気ない。