2017年3月5日日曜日

「もうろく帖」後篇


 鶴見俊輔 『「もうろく帖」後篇』 編集グループSURE  
 2700円+税

 鶴見(1922~2015)は生前「もうろく帖」というノートをつけていた(1992年から2011年)。思索のための覚書あり、本や詩歌の抜き書きあり。ノートは計23冊で、第1冊目は『もうろく帖』として2010年に刊行された。残りの22冊も鶴見がまとめる予定だった。遺族の協力を得て『後篇』として出版する。

 《二〇〇一年八月二七日
私の方法。高い地位にあがらない。党派に所属しない。
そうすれば、人にはばからず、ものがいえ、
いえないときには、だまっていることができる。》

《二〇〇五年六月二五日
現在の課題。自分のもうろくのなかで、自分のもうろくを見きわめてゆく。
つきあいをさらにせばめて、ののしりにたいして反論せず。》

 これまでのこと、老いのこと死のこと、友人たちのこと、本の感想……

《二〇〇九年二月一四日
それにつけても金のほしさよ と下の句をつければ、万能ということを、こどものころ読んだ。
今、私には、死は近いという上の句が、何について考えても、ついてまわる。》

 ノートの最後は20111021日。
《私の生死の境にたつとき、私の意見をたずねてもいいが、私は、私の生死を妻の決断にまかせたい。》

 6日後、脳梗塞で倒れ、言語機能を失う。読書は続けた。2015720日肺炎のため死去。

 SUREの出版物は基本直販で、置いている本屋さんは少ない。申し込みはこちら。


(平野)