2017年5月30日火曜日

定本 薔薇の記憶


 宇野亜喜良 『定本 薔薇の記憶』 立東舎 900円+税

 イラストレーターのエッセイ集。単行本(東京書籍、2000年)にそれ以降の雑誌連載を加える。
 
 

〈ひとりごと裸体画論〉
 宇野が初めて裸体を描いたのは中学生の時。高校卒業まで熱心に描いたが、なぜかその後はやめてしまった。

《ぼくは女性の裸に限らず静物画にしろ、造形的な意識や構成力といった冷めた認識で描かれた絵画よりも、その対象に対する画家の感動とか、優しさといったエモーショナルなものが根底にある絵の方が好きである。薔薇はあくまで、はかなげな花弁に囲まれて誇らしげでなければならず、鉄でつくられたような薔薇や、定規で描きあげたような裸婦では味気ない。それがたとえ残忍な感情にしろエロティックな心情にしろ人間の情緒に属する感情を表現したものであれば、好ましく思ってしまうのである。》

〈ステンドグラスへの郷愁〉では神戸の教会も取り上げられている。

《神戸は再度山・摩耶山といった六甲連山の山肌が、大阪湾へなだらかに滑りこむ南向きの土地に、東西へかけて横に長く延びた街であり、坂の街なのである。(中略)
 下山手カトリック教会は山手通りの山側にあって、盛土されたのか、あるいは付近が切りくずされて低くなってしまったのか、石垣の上の高台に建っている。(後略)》
 建築様式やステンドグラス・彫刻の美しさを語る。

(平野)
 この教会は我が家の近所で、私はここの幼稚園に通っていた。阪神淡路大震災で倒壊してしまった。



 お江戸表参道〈青山ブックセンター〉で購入。開店前に着いたので、すぐ近くの青山学院大学キャンパス見学。
♫つたのからまるチャペルで~