2017年11月12日日曜日

詩人なんて呼ばれて


 谷川俊太郎 尾崎真理子 
『詩人なんて呼ばれて』 新潮社 2100円+税


 谷川俊太郎評伝+インタビュー+詩21篇(書下ろし1篇)。

〇詩人になろうなんて、まるで考えていなかった
〇詩人は、全世界を引き受けようとするんだ
〇意識から出てくる言葉じゃない
〇滑稽な修羅場もありました
〇運がいいと、それを詩に書けるかもしれない

 尾崎は読売新聞編集委員、3年かけて谷川にインタビュー。谷川の生い立ちと詩人としての歩みに、時代と社会の動きを重ねて構成する。
 1962年から63年、谷川は週刊誌で社会世相を題材にした詩を連載していた。当時、高度経済成長が始まり、消費社会、土地、教育、労働、環境問題など現在につながる課題が芽生えていた。

……あの頃、詩を書いている人間の一種の敏感さみたいなものがはたらいて、自分の周囲の物事、とくに言語化されたものを全体的に引き受けようとしすぎて、それで疲れてしまったところもあった気がしますね。ふつうは皆、自分に関心のある、一部分だけ引き受けてるんだけど、詩人は全世界を引き受けようとするんだ。少なくとも、僕はそういうところがあるから、そうすると言葉にするのがもっと難しくなっていく。そのためのタクティクス、戦略みたいなものを自覚的に考えて切り開いていかないと書き続けられない。僕はその頃から時事的な詩を引き受けたり、歌詞を書いたり、脚本を書いたり。口語体の詩とかひらがなの詩とかいろいろな方向で、意識的に自分をオールラウンド・プレーヤーに鍛えようとしてきたって感触はありますね。》

「詩人なんて呼ばれて」
本当は呼ばれたくないのです
空と呼ばれなくても空が空であるように
百合という名を知る前に子どもが花を喜ぶように
私は私ですらない何かでありたい (後略)

(平野)詩人は私(1953年生)が生まれる前から詩人であり続けている。『鉄腕アトム』の主題歌でこの人の名を知った。「たにがわ」とずっと思っていた。