■ 北村太郎 『港の人 付単行本未収録詩』 港の人 2200円+税
〈荒地〉の詩人・北村太郎(1922~92)の『港の人』(1988年、思潮社)を復刊。
解説・平出隆、ケースの絵・岡鹿之助「古港」。
《……家庭を捨てた北村太郎が、彼を労わる者たちの圏内からもやがて離れて、みずからを横浜という固有の都会の中へ解き放とうとする姿をとどめた詩集である。(後略)》(平出)
《むかし船員になりたいとおもったことがあった
いちばん下っぱの水夫がいいなとおもった
ペンキくさい底のほうで
労働するのはわるくないぞとおもった
そのころのぼくの愛読書はコンラッドで
なかでも『台風』とか『青春』とかの海の小説が気にいっていた
そんなのんきな夢は
とおいとおい昔のこと(後略)》
QE2を見にやました公園に行く。船は「ごく静かに」「遅いような早いような速度で」出港していった。
「人生の一日はいつもあっという間に終わってしまう」
帰り道、あの作家は船長の資格を持っていたことを思い出す。
(平野)
北村の詩集を社名にした出版社、本年創立20周年。