2017年12月19日火曜日

江戸川乱歩と横溝正史


 中川右介 『江戸川乱歩と横溝正史』 集英社 1700円+税

日本探偵小説界二大巨星の生涯。
乱歩は1965年に亡くなったが、繰り返し選集や全集が出版され、今もベストセラー作家。
正史は70年代の角川文庫のブーム以前は忘れられていた作家と思われているが、「人形佐七」など旧作がずっと出ていた。
ふたりともデビューしてから常に執筆依頼があって書く作家だった。研究書は何冊もある。
乱歩が8歳年上。探偵小説愛好家の時代から互いに認め合い、時に反目、また支援をしあった。友情は終生変わらなかった。

休筆したり、病気になったり、書きたくても思い通り書けなかった時代があった
 本書はふたりの「交友」に焦点をあて、探偵小説出版史を重ねる。
 
〈江戸川乱歩が作りあげた最大の作品は「横溝正史」だったのではないだろうか。/その交流のなかで乱歩は横溝と、ときには探偵小説愛好家の同志として意気投合し、ときには兄のように叱咤激励し、ときにはライバルとして切磋琢磨し、ときには親友として以心伝心で理解し、常に横溝に探偵小説を書く意欲を持ち続けさせていたように思える。〉

 著者は1960年東京生まれ、作家・編集者。クラシック音楽、古典芸能、歌謡曲などの著書多数。本書では編集者だった祖父が登場する。


 
(平野)