■ 葉室麟 『玄鳥さりて』 新潮社 1500円+税
連休、孫の食べ初めで上京。
新幹線内の友は、年末に亡くなった葉室麟の遺作『玄鳥さりて』。
師弟愛を超えた男と男の愛。陰陽、日陰でしか生きられない剣の達人・六郎兵衛と陽の当たる立場の圭吾。
圭吾にとって六郎兵衛は、《どれほど悲運に落ちようとも、ひとを恨まず、自らの生き方を棄てるようなこともなかった》人で、《闇の奥底でも輝きを失わない》人。しかし、圭吾は権力中枢に近づくにつれ六郎兵衛の腕を利用しようとする。さらなる権力が襲いかかり、二人は対決しなければならない。全てを見通した六郎兵衛は大きな愛で圭吾を守る。自らを犠牲にしても。
慈愛と献身。衆道までには行かないが、六郎兵衛はまさに漢(おとこ)。
玄鳥とは燕のこと。軒先に巣を作る燕はいつか旅立つ。死を覚悟した六郎兵衛は姿を消し、圭吾のために闘う。
本書は時代小説の先達・藤沢周平への思いが込められている。
(平野)葉室の本は『銀漢の賦』(2007年、文藝春秋)を読んで以来。