■ 髙田郁 『あきない世傳
金と銀(五) 転流篇』
ハルキ文庫 580円+税
江戸時代中期大坂天満の呉服商を舞台に、主人公・幸(さち)が苦難を乗り越え、商いに精進する物語、第5巻。
商いは幸が繰り出す企画で順調。しかしながら、幸の身辺にまたもや災厄が起こる。あんまり書くと未読の方に怒られるので、このくらいに。
悲しい出来事や悪口に負けず働く幸に対して、妹・結(ゆい)は「心がない証」と女衆(おなごし)に不平を言う。女衆は、幸が人前で気丈に振る舞っているが、人知れず悲しみに耐えている、とかばう。
〈「古手を解いたら、縫い手の心が見えますのや。心ない者は心ない仕立てをするもんだす。たとえ見えるとこ、目立つとこは綺麗に繕うてあっても、解いてみたら一遍にわかります」
(中略)「ひとも同じだすやろ。目ぇに見えるとこだけで、心のあるなしを判断できるもんやおまへん」〉
それにしても、髙田郁という著者はどこまで幸と読者をいたぶるのか。このサディストめ!
卯月みゆき描く表紙の絵が美しい。帯は著者の漫画チックイラスト。
(平野)『みをつくし料理帖』特別巻の予告がある。
《ほんまにWEB 奥のおじさん》更新。
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