■ 山本義隆『近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻』岩波新書 940円+税
日本近現代史を科学技術史から考え直す。19世紀中頃に西洋は蒸気と電気でエネルギー革命を達成。日本の近代化はそのエネルギー革命と共に始まった。国家挙げて西洋の科学技術を吸収して、富国強兵・殖産興業を目指した。戦争に突き進み、原子爆弾を落とされ、ボロボロの敗戦。経済大国として復興したが、高度成長の影で公害が発生した。平和利用の原子力開発は福島原発事故を起こす。これは近代科学技術の破綻。一貫して「総力戦体制」。そして、人口減少。
《大国主義ナショナリズムに突き動かされて進められてきた日本の近代化をあらためて見直す決定的なときがきていると考えられる。》
科学技術の進歩は無条件に良いものだろうか? 日本の原子力開発の歩みを読むと、恐ろしい事柄ばかり。戦犯総理大臣がかつて「潜在的核武装論」を唱え、現首相はその考えを踏襲しているようだ。現在日本には6000発のプルトニウム爆弾を作れる材料がある。原発事業はまさに国家総力戦体制で、関連産業は「国策会社」として保護され、政・官の利権構造が維持される。ほとんど語られることのない原発事故後の「決死隊」。あらためて指摘される原子力発電の商品としての完成度の低さ。
「アンダーコントロール」なんて嘘。
(平野)