■ とみさわ昭仁 『無限の本棚 増殖版 手放す時代の蒐集論』
ちくま文庫 860円+税
幼少時からさまざまな「物体」を蒐集。お酒のキャップ、切手、ヒーローカードに野球カード、映画のチラシ、コミック、レコード、ジッポーライターに、ダムカードというものもある。「物体」に取り憑かれ、情熱を傾けてきた。蒐集にはお金がかかるし、品を置く場所が必要。家族に迷惑をかける。所有者が亡くなれば処分されて消えてしまうだろう。
著者は十分に楽しんで手放す。50年を超える蒐集生活から、「概念」を蒐集する境地に達した。名づけて「エアコレクション」。
〈何も集めないコレクター。溜め込むことからの解放。〉
詳しいことは読んでほしい。
今、著者は古本を集め売り、そのお金で旅に出て、本を買い、レコードを買い、おいしいお酒を飲む。買った本は棚で編集して売る。レコードもDJ活動に活かす。店番しながら原稿を書く。
〈これらの経験はすべて、原稿仕事の肥やしになる。/そうしてまた、古本の売上げと原稿料を持って旅に出る。/隙間の開いた本棚を埋めるために。/マニタ書房は、僕がやっと見つけた、無限の本棚なのだ。〉
帯に、「ぼくが『蒐集』の字を使うのは、文字に鬼が棲んでいるからだ」とある。蒐集には「鬼」となる覚悟がいる。
《あとがき》で、奥さんのことに触れていて、ジーンときた。
(平野)