2018年8月21日火曜日

無限の本棚


 とみさわ昭仁 『無限の本棚 増殖版 手放す時代の蒐集論』 
ちくま文庫 860円+税
 
 
 神保町の古書店「マニタ書房」店主。2016年アスペクト初版に加筆。

幼少時からさまざまな「物体」を蒐集。お酒のキャップ、切手、ヒーローカードに野球カード、映画のチラシ、コミック、レコード、ジッポーライターに、ダムカードというものもある。「物体」に取り憑かれ、情熱を傾けてきた。蒐集にはお金がかかるし、品を置く場所が必要。家族に迷惑をかける。所有者が亡くなれば処分されて消えてしまうだろう。
 著者は十分に楽しんで手放す。50年を超える蒐集生活から、「概念」を蒐集する境地に達した。名づけて「エアコレクション」。

〈何も集めないコレクター。溜め込むことからの解放。〉

詳しいことは読んでほしい。
 今、著者は古本を集め売り、そのお金で旅に出て、本を買い、レコードを買い、おいしいお酒を飲む。買った本は棚で編集して売る。レコードもDJ活動に活かす。店番しながら原稿を書く。

〈これらの経験はすべて、原稿仕事の肥やしになる。/そうしてまた、古本の売上げと原稿料を持って旅に出る。/隙間の開いた本棚を埋めるために。/マニタ書房は、僕がやっと見つけた、無限の本棚なのだ。〉

 帯に、「ぼくが『蒐集』の字を使うのは、文字に鬼が棲んで(、、、)いるからだとある。蒐集にはとな覚悟いる
《あとがき》で、奥さんのことに触れていて、ジーンときた。

(平野)