■ 穂村弘 『水中翼船炎上中』 講談社 2300円+税
短歌328首。現在のこと、子供時代・思春期の記憶、母親の死、父親の老い、そして現在の日常のことを詠む。船の絵ハガキ、地図、船のロープ、旅行カバンなどを使った装幀(名久井直子、デザインは表・裏各3種類で9パターンあるそう)。時間を超えた旅がテーマ。
〈人間の心は時間を超える。けれど、現実の時は戻らない。目の前にはいつも触れることのできない今があるだけだ。(中略)私の言葉はまっすぐな時の流れに抗おうとする。自分の中の永遠が壊れてしまった今も、水中で、陸上で、空中で、間違った夢が燃えつづけている。〉(「あとがき」より)
〈ゆめのなかの母は若くてわたくしは炬燵のなかの火星探検〉
〈あ、一瞬、誰かわかりませんでした 天国で髪型変えたのか〉
〈クリスマスイヴの鮨屋に目を閉じてB-29の真似をする父〉