■ 吉田篤弘 『おやすみ、東京』 角川春樹事務所 1600円+税
主人公たちは、モノを探し、人を探し、恋愛問題を抱え、家族の面影を求める。人と人が出会って、話して、時にはすれ違って、ひとつひとつ問題が解決してゆく。タクシードライバーがつぶやく。
〈人と人がどんなふうにつながってゆくかは、さまざまな理由があり、その理由となる道筋やきっかけが、この街には無数にある。この街でこの仕事をしていて、いちばん感じるのはそれである。「偶然、出くわす」確率が圧倒的に高い。〉
彼らはそれぞれ悩みを抱えている。決断しなければならないと思っている。それぞれが、もう一歩踏み出せば、もうひとつパズルのピースがあれば、と。一方、次に進むために過去を断ち切りたい人もいる。パズルを完成させることが「次」ではないことがある。遠回りが必要な場合もある。