■ 久住邦晴
『奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの』
ミシマ社 1500円+税解説 中島岳志 装丁 矢萩多聞
札幌くすみ書房店主の遺稿。2017年8月28日肺がんのため逝去、享年66。
「なぜだ!?売れない文庫フェア」「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」他、ユニークなブックフェアで本屋業界を牽引した。北海道書店商業組合理事長も勤めた。 小さな町の本屋は経営がたいへん。大手書店の出店・撤退、売り上げ不振、ご家族の不幸、店舗移転、取次からの入荷ストップ、苦境のたびに立ち上がった。
売り上げアップのため次々フェアを企画し、そのたびにメディアに取り上げられた。講演もした。全国の本屋もくすみのフェアに注目した。支援者が現われ、人も集まる。それでも毎月の資金繰りはたいへん(ここには書けない辛いやり繰りも)。寄付を募り、友の会を立ち上げ、クラウドファンディングで資金集めもした。何度も「奇跡」は起きた。しかし、2015年6月閉店。1年後、「奇跡の本屋をつくりたい」と復活に向けて動き出す。
再開を目指す本屋の店名は「THE BOOKs green」。中学生・高校生向けの本を揃えた本屋。
〈数年前にクラウドファンディングで資金集めをしたことがありました。そのときのテーマは「奇跡の本屋を作りたい」でした。本には人生を変え、奇跡を起こす力があります。そんな本であふれる本屋を作りたい、と。/その気持ちは今でも変わりません。私は本の力を信じています。だから、読書離れが進んでいる中高生に本の面白さを伝えたいと願っています(でも奇跡の本屋という言い方は今の私には少し重い……です)。〉ブログ草稿「西区に本屋をつくります」より。
(平野)
久住さんのことはメディアで知るだけ。フェアの話題や書店組合の活動など良いニュースが多かったので、経営危機や閉店を知った時は驚いた。本屋継続の苦闘があったでしょうに、「楽しい本屋」構想を立てておられた。本書発行日は久住さんの一周忌、合掌。