■ 『本の虫の本』
創元社 2300円+税
林哲夫 能邨陽子 荻原魚雷
田中美穂 岡崎武志
イラストレーション 赤井稚佳 創元社 2300円+税
本好き《五匹の虫》による本にまつわる話。著者たちは名うての読書人にして、ライター、画家、書店員、古本店主ら。
「……単に本が好きとか、本を愛する、というだけでなく、文字通り、本を食べて本とともに暮らしていると言ってもいいくらいのムシたち」
出版用語・古書用語解説あり、伝説の《本の虫》紹介あり、それぞれの日常談・体験談あり。本好きの習性・苦悩、読書の楽しみ、本への愛を本の虫たちが自由に書く。
本の匂いについて、「小脇にはさむ」もの、「全部読んだんですか?」と訊いてはいけない、本に「靴跡」とは、「整頓」について、本屋労働者の宿命「腰痛」、「店猫」、なぜ「同じ本を何冊も買う」のか、「本を食べる」話、「書物の敵」、「蟲の字」などなど155篇。本の紹介もあるのでブックガイドとしても役立つ。担当編集者による「ちょっとマニアックな用語集」もあり。テーマ別索引、書名索引あり。
積ん読とは、買ったまま読まずに置いておくことで、いい意味には言われない。「全部読んだのか」と問われ、「つんどく、つんどく」と謙遜する場合もある。
最初にこの言葉を使ったのは明治大正の学者で官僚の田尻稲次郎という人だそうで、大金持ちは読まなくてもいいから出版される本を全部買え、とおっしゃった。ジャーナリストの内田魯庵は、つんどくは無用でも呪うべきものでもなく、読まなくても書物から発散される雰囲気に陶酔できる、と仰せられた。詩人アナトール・フランスは「書物を戸棚の中に入れておく以上の立派なことができようか?」としたためておられる。蒐集するだけで満足という人もいる。ハヤシウンチククサイムシ氏「つんどく」より。
(平野)私など積ん読・並べ読なら良い方で、突っ込ん読も多々あり。