2020年9月13日日曜日

あきない世傳 金と銀九

9.10 閉店後もニュースになる。「毎日新聞」京都・三月書房記事。 https://news.yahoo.co.jp/articles/42593a49aad00c14fa14ae321f2875fbeabbb1d1  

9.11 通勤電車内でボーッと立っていたら、離れた席でちくま文庫を読んでいる男性が目に入った。カバー裏表紙しか見えない。何の本かなあ、残念ながら私の位置からは書名不明。すごーく気になる。  
 北村薫『雪月花』。雑誌掲載時に読んでいたけど、まとめて読んでさらに著者の力量に感嘆する。私の読書や知識でなんのかんの言うのはおこがましい。  
 特に「ゆき」は読後膝を叩き、ほっぺたをしばいた。三島由紀夫は賞に恵まれなかったという話から、「潮騒」の文学賞受賞を祝う集まりの話に。先輩の大物作家たちが悪趣味なプレゼントや連歌でいじりまくる。最後に三島が返すことになるが、それを紹介する前の段階、北村の探索が凄まじい、これぞ作家魂。山田風太郎の短篇から雪の日の句、その作者は従来ある殿様といわれているのだが、ほんとうにそうか、調べるほどに謎が深まる。編集者たちも巻き込み謎に挑む。その間、古典資料、テレビドラマ、映画、落語が出てくる。その俳句に関係あるのかというと、ある。7月に雪の探索が始まったそう。あっち行きこっち行きで、真の作者を探し出し、なぜ殿様の作になったのかまで追究していく。けど、謎は謎。雪=ゆきの不思議、「ゆき」のつく作家のエッセイを紹介し、それも見事な幻想短篇小説のよう。三島の祝賀会に戻る。さて、三島はどう返したか。三島の名にも「ゆき」がある。  

9.12 目当ての本があって本屋さんに行って、思わぬ本に出会うことがある。喜びである。シリーズ本で、ああ出てたんや、というのもうれしい。 
  髙田郁『あきない世傳 金と銀(九)淵泉篇』(ハルキ文庫)
 早速開く。次々困難が主人公を襲うのは小説だから仕方ないが、今回は実の妹が浅はかにも敵側に行ってしまう。それでも主人公主従と仲間たちは今できる最大限の努力をする。深い絶望の淵の底から知恵を泉のように湧かせる。以前登場した儒学者が「菜根譚」のことばを説き、励ます。その学者が早世した兄・雅由の学友であるとわかる。超個人的に私は雅由が気に入っている。  
 ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウスⅩ』(新潮社)も。
(平野)