2022年5月29日日曜日

コスメの王様

5.24 東京のイベント装飾・岩さん、小林さん、のの様、福岡さんと一杯。岩さんは毎年この時期仕事で来神、海文堂にもよく来てくださっていた。コロナだから会うは3年ぶり。「くとうてん」慰労会開催決まる。なんとなーく、来年海文堂閉店10年にやねー、の話。さあ展開するか?

5.25 周防大島から新刊本届く。


 

5.26 妹孫誕生日お祝い宅配便、姉の絵本やら何やらも同梱。

5.27 孫電話。ヂヂが姉に送った古い絵本、「もってるよー」と注意される。ヂヂバカ、ごめんねごめんねー。

5.28 家人は友だちと出かけた。ヂヂは布団干して洗濯掃除買い物。来週半ばから図書館が蔵書点検のためしばらく休館するので、必要な本を借りておく。

 高殿円 『コスメの王様』 小学館 1600円+税



 神戸花隈が舞台。実在の化粧品メーカー創業者を題材にした立身出世物語であり、少年と少女の純愛物語。出会ったのは明治33年。

〈日本一活気のある都市、それが神戸であった。開国以来、居留地はどんどんと発展し伊藤博文が県知事を務めてからは、権力者にあやかろうと多くの野心家たちが神戸に居住した。伊藤公が去ったあと、その屋敷あとは料亭となり、元町から数件のお茶屋が移転してきて、芸妓たちに住友、三菱、三井、鈴木ら財閥や政界の旦那が付いた。旦那が付けば莫大な金が回る。金が回れば人が集まる。こうして船と商いのもたらす富によって、ここ神戸花隈はまたたく間に一流の色町になったのである。〉

 家族のため神戸で丁稚奉公する少年利一。店の手代の副業を手伝わされ、殴られ蹴られ。花隈のドブで倒れているところをおちょぼ=舞妓の卵・ハナに助けられ、置屋の人たちに介抱される。

利一はハナの忠告を受け、いったん故郷に帰る。2年後、大分の薬種問屋の神戸支店長となって戻ってきた。

ハナは牛より安い値段で売られてきた。金に縛られた身。芸事に精進し、舞妓から芸妓になって、贔屓の顧客を増やし、特定の旦那のバックアップを受けることが定め。

 利一は問屋から独立、洋品雑貨販売からスタート。花隈で知り合った友人たちが手伝う。当時芸妓・舞妓、歌舞伎俳優など玄人商売の白粉は鉛入りの危険なもの。陶土と牛乳を原料にした水白粉の評判を知り、販売権を獲得。品質の良さ、価格の安さ、専門家の保証、それらを伝えるため広告の重要性を知る。一般女性のための安全で健康に良い基礎化粧品の自社開発を思い立つ。まず銭湯のぬか袋からヒントを得て、洗い粉を発売。

 ハナは花形芸妓となり、旦那も決まる。利一は仕事一筋。アメリカの偉人、ベンジャミン・フランクリンの自叙伝にある「真心に沿って生きよ」を座右の銘に励む。会社のシンボルマークはハートの中にクイーン。モデルはハナ。

 利一の会社は大きく成長。ハナと旦那との縁切りが円満にできれば、ふたりは結婚できるかもしれない。花隈の関係者、贔屓客らがいろいろ考える。ところが、不良グループの首領になったハナの兄が暗躍、旦那を喰いものにし、利一も標的に。ハナの決断は?

 小説では会社名「永山心美堂」。1903(明治36)年創業の「中山太陽堂(現在のクラブコスメティック)中山太一」がモデル。ポスター、外車の宣伝カー、飛行機ショーなどモダンな広告を展開。その一環として出版社「プラトン社」も作った。戦争あり、恐慌あり、苦難と成功を繰り返したが、太平洋戦争中・戦後の痛手は大きく、破産する。

 著者は神戸出身。花隈城址、ドンタク(城址から正午の時報を港に知らせるため塔の上に鉄球を引き上げ落とし、港ではそれを合図に空砲を撃つ)、東郷の井戸、福徳寺、弁天様、狸坂、神戸教会、神戸倶楽部、など花隈の佇まい、元町通の賑わいなどを再現する。利一とハナを支える人たちは好人物ばかり。モデルはどんな人たちだろう。ハナは創作でしょう。

(平野)