2022年6月2日木曜日

裏横浜

5.29 「朝日歌壇」より。

〈「女性誌」と「男性誌」の棚は仕切られてその奥の棚に「婦人誌」もあり (町田市)村田知子〉

5.30 京都SUREから新刊着。鶴見俊輔『日本の地下水――ちいさなメディアから』1960年から21年間「思想の科学」に連載した地域雑誌評。複数の筆者が担当したが、本書は鶴見執筆分をまとめる。今年は生誕100年。積ん読溜まっているので、紹介はだいぶ先になる。

 妹孫満1歳の誕生日。


 

6.1 「朝日新聞」夕刊に、銀座・教文館「ナルニア国」のウクライナ支援記事。ヨーロッパ在住の日本人絵本作家・画家と協力して寄付金を募る。お礼にオリジナル包装紙プレゼント。

https://www.asahi.com/articles/ASQ5W44J1Q5NUCVL01Z.html

 

 八木澤高明 『裏横浜――グレーな世界とその痕跡』 ちくま新書 860円+税



 著者は写真誌カメラマンを経てノンフィクションライター。世界を旅して、取材するのは紛争地や土地の裏の顔。

横浜の生まれ育ち、少年時代の思い出からはじめる。自転車で港に釣りに出かけ、街のあちこちを走り、怪しい地域に迷い込んだこともある。プロ野球「大洋ホエールズ」のファンだった。そこから親会社の捕鯨、球場周辺のルーツを追う。

晴れやか、おしゃれ、エキゾチック、明るい港町の地下に眠るのは、遊郭、屠畜場、労働者、ドヤ街、麻薬、革命家の隠れ家、移民宿、米軍兵士……

〈すでに水運は交通手段でなくなり、船旅は富裕層が豪華な旅を楽しむものでしかなくなった。港もオートメーション化されたことにより、港湾労働者も消えた。それゆえに、大桟橋や赤煉瓦の周辺は、テーマパークのようになるか、廃墟となるか、その選択肢は多くなかった。カジノ誘致を巡る問題が噴出しているのも、港の衰退と無関係ではあるまい。〉

 八木澤は先輩から「デラシネ(根無し草)」と言われるが、海外から横浜に戻ると、愛着を感じる。取材や日常生活で、快・不快「愛憎入り乱れた場所」でもある。掘り起こした過去の痕跡、出会った人びとが語る現在、清濁併せた横浜の姿。

(平野)神戸も同じような歴史を辿ってきた。私は港に近い下町の育ち、裏の世界は日常のすぐそばにあった。