10.28~30
金曜日早朝、仕事休み取ってお江戸まで。早起きのご近所さんに挨拶。「孫に会いに行ってきます」。
旅の伴は小沼丹『古い画の家』(中公文庫)。私小説の人と思っていた。本書はユーモアミステリー集。日常の小さな事件、ときどき殺人。
家人と別行動。ヂヂは江戸入りのお参り、神田明神。♪なんだかんだの明神下で~(関沢新一作詞)。境内に記念写真用の銭形平次看板(顔だけ出すあれ、名称知らず)あり。
東京古書会館の古本市を覗くが、開館前に強者たち行列。目的なくうろつくけど、本も値段も手が出るレベルじゃあございません。あっさり退散。
NR出版会事務局・天さん、新泉社・安さんと恒例ランチ。業界情報と家族近況、共通の友・神戸画家の悪口。
神保町古本まつり。行ったり来たりで文庫2冊のみ。東京堂書店軍艦棚の品揃えに感動。三省堂書店工事中。
土曜日、神保町ブックフェスティバル。PR冊子はいずれも読み応えあり。すずらん通りのワゴン販売は人だかり、長蛇の列、の大盛況。古本文庫1冊、特価本3冊(孫の絵本2冊)、東京堂で新刊1冊。
家人、娘一家、息子とランチ、姉孫の誕生日お祝い兼ねて。妹孫はビデオ電話のヂヂと一致しないようでタッチも抱っこも拒否。
銀座に出て教文館で雑誌と新刊1冊、2年ぶり。ウインドウはクリスマス装飾。児童書〈ナルニア国〉「堀内誠一原画展」。
日曜日、谷中霊園、家人の母方実家墓参り。日暮里パンの本屋も2年ぶり。髙田郁色紙あり、同店文庫ベスト1の表示。こまめな営業行脚に拍手。紀伊國屋書店新宿本店はリニューアル中、1階2階は新装完成。山手線途中下車しながら一周して帰神。野球日本シリーズ今年も熱戦、猛牛組の勝ち、あっぱれ!
10.30の「朝日歌壇」より。
〈ただいまと言える書店が閉店し駅前が消え新幹線来る (札幌市)港詩織〉
〈逝かないでゲルマンの孫帰ったよ将棋の駒もまだここに (ドイツ)沓掛理絵子〉
入選常連、長野県坂根町の山根屋書店店主・沓掛喜久男さんが本年9月に亡くなったそう。ドイツ在住娘さんの追悼歌。
■ 渡辺京二 『小さきものの近代(1)』 弦書房 3000円+税
熊本市在住の近代日本史研究家。石牟礼道子をサポートした編集者として知られる。「熊本日日新聞」連載。
「小さきもの」。〈……上から日本近代国家を創った人物たちではなく、その創られた「近代」に適応してゆかざるをえない者たちのこと〉。
明治維新について、革命とする意見がある一方、封建制度をとどめた天皇制国家、不十分な改革、と見るのが大勢だった。
渡辺は、幕藩体制解体、身分制撤廃、地租改正、徴兵制、教育制度などを実現した急激さ・徹底性を「世界史に稀に見る壮観」と言う。中央集権国家を創出しなければ国際社会に通用しない。主権は幕府? 朝廷? 西国雄藩? では他国と交渉はできない。
〈要するに、維新革命とは日本が国際社会に再登場するための緊急避難的措置だったのである。それは徳川社会が劣悪であるが故に、その改革のために起こったのではない。一六・七世紀に生じたヨーロッパとのファースト・コンタクトがもたらした危機を、「鎖国」によって切り抜けたこの国が、否応なく強いられたセカンド・コンタクトをなんとか乗り切るための緊急避難として、国家構造の変革を目指したものにほかならなかった。ひとりひとりの小さきものの幸・不幸など、問題ではなかった。(後略)〉
日本近代の大きな歴史の流れの中で、渡辺は〈支配される人びと、あえて言えば小さき人びとが、維新以来の大変動をどう受けとめ、自分自身の「近代」を創り出すために、どのように心を尽くしたかを〉語る。
百姓一揆の指導者、民衆宗教指導者、攘夷論者、漂流者、外交交渉者、市井の女性たち、芸人……。歴史に名を残す人もいるが、多くは名もなき庶民。彼らの「希求と努力」を追う。
(平野)