2024年6月1日土曜日

つげ義春が語る 旅と隠遁

5.29 「朝日新聞」夕刊に尼崎の小林書店が今月末で閉店のニュース。店主夫妻体力限界と決断。お疲れ様でした。誰かが引き継いでできる、というものではない。


 

5.30 ギャラリー島田DM作業召集あり、おにぎり持って参上。7月末をもって地下会場を閉じる由。海文堂ギャラリーから山本通に移り、再出発の地であるが、残念。1階の2会場で活動を続ける。

 

 『つげ義春が語る 旅と隠遁』 筑摩書房 2300円+税



 1970年代から約50年間の対談・インタビューを集める。お相手、文学関係では深沢七郎、正津勉、川本三郎、漫画界から、高野慎三、石井隆、池上遼一、古川益三ら。家族の藤原マキ、つげ正助、つげ忠男も登場。

 つげは貧しい生い立ち、小学生からアルバイト、卒業して工場勤め。貸本マンガでデビューするが、家賃2年滞納する赤貧生活。印刷工場の面接に行く途中で青林堂に寄ったところ、水木しげるの手伝い募集を知るマンガ家になったのは憧れてなったわけではなく生活のために転職、と語る。

〈本を作るのは知的産業のように思われていますけど、当時の貸本出版の現場というのは、家内工業的な子どものオモチャを作る感覚だったのです。原稿に写植を貼るのも版元の近所のオバサンが内職としてやっていたりで、紙芝居の世界も似たようなものでしょう。だから自分も、ちょっと絵が描けたから転職しただけなんですよね。その感覚がずっと続いているから、マンガがダメなら古本屋とか古物商に転職しようという気になるわけなんです。今後また運命が変るかもしれない(笑)。〉

雑誌「ガロ」では子ども向けにこだわらず自由に描くことができた。文学を読むようになって視野が広がったと思うが、作品が「難解」になったのは文学や芸術に目醒めたからではない。

〈難解なものは、自分の心の不安定が生み出したような気がするんです。自分の心の拠りどころのない不安感が煮つまって、それを表現しようとして難解になってしまったのではないかと思えるんです。(後略)〉

 生い立ち、旅、家族、病、宗教などから、作品の背景を聴き出す。

(平野)