2024年10月14日月曜日

江戸川乱歩座談

10.6 「朝日俳壇」より。

〈捨て難き書をまた戻す夜長かな (多摩市)田中久幸〉

〈本の虫虫が大好き虫図鑑 (さいたま市)春日重信〉

〈宇能没すたわわに熟す葡萄なる (秦野市)浜田恵〉

10.8 森鷗外長男・於菟の生涯を描いた本に心動かされ、余計なお世話。出版社の昔馴染みの営業マンに関連資料コピーを送りつける。著者さんの役に立つかどうかわからないけれど、ヂヂのおせっかいは迷惑かもしれない。

10.9 孫電話。姉はいきなり「しりとりしよう!」。退屈していたか、それともヂヂババと遊んでやろうの心遣いか。妹は今日食べたものの報告と、明日食べる予定を教えてくれる。

10.11 「朝日新聞 鷲田清一 折々のことば 3231」。

 夏葉社社主・島田潤一郎『長い読書』(みすず書房)より。

〈自信のない声や、いい淀む声、朴訥な声や、なにかに身を捧げるような静かな声のほうに真実味を感じる。〉

10.12 日本原水爆被害者協議会(日本被団協)ノーベル平和賞受賞。

〈「ヒバクシャ」として知られる広島と長崎の原子爆弾の生存者たちによる草の根運動は、核兵器のない世界の実現に尽力し、核兵器が二度とつかわれてはならないことを証言を通じて示してきたことに対して平和賞を受ける。〉ノーベル委員会授賞理由から(「朝日新聞」10.12)。

 

 『江戸川乱歩座談』 中公文庫 1300円+税



 2024年は江戸川乱歩生誕130年。現在も大人気作家である。

……探偵小説の未来について多様な創作営為を持つ人々と広く意見を分かち合い、対話をもってジャンルの行く末を志向していく場を用意する、優秀なホストとしての乱歩像である。〉(解説・小松史生子)

本書は探偵小説仲間との対談・鼎談だけではなく、他ジャンルの作家や文化人らとも対談を収録。乱歩は寡黙のイメージだが、ホスト役を勤めて話を引き出していく。

 仲間と探偵小説そのときどきの現状、将来を語り合う。文豪たちの探偵小説趣味、探偵小説好きが語る批評、それに同性愛、心霊現象の話も。

 小林秀雄との対談で「独裁国に探偵小説なし」という話に。

……戦争のときにはドイツやイタリアでは探偵小説を禁じたでしょう。それに尻馬に乗って日本も探偵小説が弾圧されちゃったですよ。僕なんか七年ぐらい全然収入なかったですよ。(中略)ところがアメリカやイギリスは塹壕の中で探偵小説のポケット版を読みながら戦っていたじゃないか。これはちゃんと裁判を護国だ。独裁国ではこういうものは流行りこないということを戦争中にさかんに向うの人も言いました。(後略)〉

(平野)