2026年5月30日土曜日

ラピスラズリ

5.27 有給休暇で3日連続労働なし。のんびりできるはずが、家事に時間かかる。いやいややるからよけいにそう思う。じゃがいも皮むきの毎日。我が家の主食。

 関東在住の友人から手紙。お連れ合いの話をちらっと聞いていたけれど、具体的詳細に書いてくれている。小学生時代からのご縁が時を超えて結ばれた由。お幸せに。

 プロ野球巨人組監督の家庭内問題からの展開をテレビでああやらこうやらやかましい。ヂヂイは事態のスピードとAI使用についていけない。

 

山尾悠子 『ラピスラズリ』 ちくま文庫



 2003年に国書刊行会から単行本。20121月ちくま文庫。花森書林にて購入、132刷。

先日紹介した『飛ぶ孔雀』よりすんなり読めた。「冬眠者」たちの物語5篇。

「銅版」「閑日」「竈の秋」は連作。

「銅板」。深夜の画廊で「わたし」は3枚の銅版画に見入る。描かれているのは、秋の終わりの森、真冬の寝室、庭園風景。画廊主がそれぞれの画題「人形狂いの奥方への使い」「冬寝室」「使用人の反乱」とストーリー「冬眠者のものがたり」を教えてくれる。時空を超えて、5歳の「わたし」は人形を抱き、母の絵の解釈を聴きながら別の絵が気にかかる。画廊主が画題を囁く。「痘瘡神」「冬の花火」「幼いラウダーテと姉」。

「閑日」「竈の秋」。舞台はヨーロッパの北国だろう。貴族の広大な邸宅、大庭園、多くの塔。霜月(なぜか陰暦)「冬眠者」一族のため使用人たちは準備に忙しい。冬眠前の飽食、塔に住むゴースト、見守り役の古い人形たち、眠れない娘、会計係の不正、感染症=痘瘡、地震、火災、森の異民族……。破滅と破壊が迫る。

「トビアス」の舞台は日本、「地方の廃市」。

「青金石」に聖者フランチェスコが登場。聖者は自らの死期を悟っている。「冬眠者」の若者がイエス降誕場面の人形や飾り物を運んで来た。若者は「冬眠」のため冬の降誕祭に間に合わなかった。聖者に告白。家族を持てない、冬の間は歳をとらない、春目覚めても空腹と人恋しさに震えている、おれは天に赦されるだろうか、と。聖者が、夜明け前の闇の中で光り輝くものを見られたね、と問う。

「(言い伝えで)浅い春、聖母の青を空に見たものは目覚めを告げる御(み)使いを見ることがある。(略、東方では啓蟄、西では復活と呼ぶ)毎年の目覚めに見るというわけではない、多くはひとりの者が一生にいちど見るかどうかといいます。聖人さま、おれはこの春先にそれを見たのですよ」

 目覚め後、発熱、震え、空腹、枯渇、再生できた安堵、失望……。呼んでも答える者はいないなか、青い光に気づく。

「塵芥に埋もれ朽ちた十字架の突端をひそやかに照らし、草萌えの廃墟にあって冴えざえと我のみ青く、それは天上の青、いたって貴重な顔料である青金石(ラビスラズリ)の青でした。天が裂けてこぼれ落ちてくる光――そして草の上にいたおれはそのみなもとの方角へと顔をあげ、輝く雲間から尖塔に降りてくる天使を見たのです」

冬、夜、眠り、破滅の物語が、ここで春、朝、目覚め、再生の物語になる。

(平野)