2021年12月31日金曜日

熔果

  黒川博行 『熔果』 新潮社 1900円+税

 元大阪府警のマル暴刑事コンビ、現在は不動産競売会社の調査員という肩書。占有屋との交渉(もちろん力づく)で金塊密輸とその強奪事件のカラクリを嗅ぎつける。大阪、淡路島、下関、北九州、大分から名古屋、岐阜と走り回る。5億円の獲物をめぐって悪人どもがぶつかり合う。熔けるのは金塊か? 金の亡者か?



 12.31 

2021年、いいことがあった、二人目の孫を授かった。

悲しいこと、恩人が亡くなった。

寂しいこと、「ほんまに」発行元が廃業。

コロナ禍で2年連続飲み会なし。友とのバカ話はもう少し辛抱。

 

どうぞ良いお年をお迎えください。

(平野)

2021年12月30日木曜日

宮本常一と民俗学

 12.26 日記の日にちを間違えている。前回の「24日」分は25日のこと。おバカです。

 本日もちょっと掃除して、図書館。

「朝日歌壇」より。

〈葵ちゃんと本の話がしてみたいホウキにまたがり奈良まで行って (向日市)望月和奏〉

「葵ちゃん」は入選常連の奈良・山添ファミリーの姉9歳。

 12.27 PR誌「scripta」(紀伊國屋書店)の都築響一連載が〈おかんアート〉紹介。新年122日から東京都渋谷公園通りギャラリーで「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」開催。

https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2022/20220122-119.html

 12.28 「朝日新聞」文化欄〈群星訃〉は今年亡くなった人たちを仕事繋がりから紹介。27日はテレビ番組「ウルトラQ」「ウルトラマン」の制作や俳優の人たち。本日は製本・装幀家、平野甲賀、栃折久美子、桂川潤。

 花森書林お休み、郵便受けにメモを入れる。

 元町事務局に今年の最終原稿届ける。

 前日家人がATMで失敗してキャッシュカードロックかかり、銀行に解除お願い。

 生田神社お参りして、寅絵馬写真。

 12.29 本年仕事終了。年末年始用の悪漢小説に取りかかる。

 

 森本孝 『宮本常一と民俗学』 玉川大学出版部 2500円+税



 同出版部「日本の伝記 知のパイオニア」シリーズ。

宮本常一(190781年)は山口県の周防大島生まれ、民俗学者。苦学し、友人、恩師に助けられ研究の道に進むことができた。渋沢敬三の指導・支援を得た。

宮本は、日本の白地図に彼の足跡を赤インクで印をしたら真っ赤になる、と言われるほど全国を歩いた。古老聞き書き、農具・漁具・民具蒐集、農業指導、町づくり・村づくり、離島振興、山村振興、伝統芸能の支援など、研究者以上に活動家だった。59年『日本残酷物語』(平凡社)、60年『忘れられた日本人』(未来社)など著作が出版され、その名が知られるようになった。

 森本は1970年に日本観光文化研究所(宮本所長)に入所。漁村文化や造船技術調査・収集に従事。旅はアジア、アフリカ、太平洋諸島に広がった。国立水産大学校教員、周防大島文化交流センター参与を務めた。宮本に代わって、「宮本常一」の生涯を語る。進歩する現代社会のなかで失われていく過去を見直すことが必要、と訴える。

(平野)

2021年12月26日日曜日

東京古本屋本2冊

 12.22 仕事有給休暇取得。鵯越墓園、寒さ和らぎ、楽。

 娘一家、今年は帰省しない。ヂヂババ静かに年越し。年賀状文案を考える。

 12.24 家人にケツ叩かれながら掃除。あいまに孫のクリスマス写真見る。

古本愛好タカさんから未発表原稿コピー届く。灘区JR六甲駅・阪急六甲駅を中心に展開していた南天荘書店のPR誌「野のしおり」を取り上げたもの。同誌編集人は今牧師さん。

年賀状投函。年賀状は新年に書くことにしていたのに。

午後、本屋さん。

「みなと元町タウンニュース」353号届く。拙稿に間違いあり。太平洋戦争宣戦の日「1216日」と誤記。正しくは「128日」。恥ずかしい。不覚。

 


古本屋本2冊。



 橋本倫史 『東京の古本屋』 本の雑誌社 2000円+税

 2019年末から20217月、東京の古本屋さん10軒に3日ずつ密着して取材、お手伝いもした。コロナ禍真っ只中。オリンピックもあった。休業するか、店を開けるか、どうやって継続していくか。ベテラン、若手、3代目、新規参入者。困難な状況で店主たちはどうのように考え、行動したか。それぞれの生活記録。

 

 中山真如編著 東京古書組合後援 

『古本屋的! 東京古本屋大全』 本の雑誌社 2700円+税

 東京都古書籍商業協同組合の機関誌「古書月報」から「傑作選」をまとめる。同組合は昨年100周年を迎え、「月報」も膨大な量。中山は50年分298冊を読み通し、古本業界の奥深さを紹介。本のこと、仕入れや市、様々な客のこと、先人たちの苦労、女性店主たち、趣味の話。

目次 記憶に残る古本屋を訪ねてみよう 仕入れも値付けも悩みはつきない ネット販売、即売展、古本屋考現学 大先輩たちの話にもかたむけたい 女性店主だから古本屋は楽しい 古本以外の趣味だってあるのだ 買取こそが古本屋の醍醐味である だから古本屋はやめられない!

 本書は『東京古書組合百年史』(同組合編・発行)との連動企画。中山はその編纂副委員でもある。

(平野)私は古本マニアではないし、特別な蒐集もしていない。新刊や図書館で読めないものを探すくらい。最近は古本屋さんでないと入手できない新刊本もある。上記『百年史』には手が届かない。古本にまつわる奇人変人(失礼)の話は面白い。

2021年12月22日水曜日

古本仙台ぐりとぐら

 12.20 新雑誌「古本スタイル 01」(書肆よろずや)を読む。 

編集・山本善行 デザイン・林哲夫 600円(税込)



鈴木裕人 龍膽寺雄と歩く街 

林哲夫  古本ゴロゴロ道  スパイクふるほん旅

山本善行 善行堂日記

 本(特に古本)を楽しむ。本について楽しんで書く。林・山本の〈古本スタイル〉。

書物愛好誌「sumus」全巻復刻の計画があるそう。

12.21 歯医者さんとギャラリー島田DM発送作業。どちらも本年最後。

『仙台本屋時間』Biblantern ビブランタン、1800円+税)読む。仙台の本屋さんガイド。行ったことないのに、今のところ行く予定もないのに。本屋時代の友人がいるのだよ。

 




『ぐりとぐらのたまご』(ブルーシープ、1200円+税)を読む。東京都立川市〈PLAY! MUSEUM〉で開催中の「ぐりとぐら しあわせの本」展関連書籍。

 


「絵本が教えてくれる日々うっかりこぼれ落ちてしまいそうな大切なことを、手のひらに乗るぶんだけ」集めた小さな本。私は作者の中川李枝子と絵の山脇百合子が姉妹と初めて知った。中川が映画「となりのトトロ」の「さんぽ」のうたの作詞者だったことも今まで知らなかった。無知ヂヂ。

(平野)

2021年12月19日日曜日

人間晩年図巻 2004-07

 12.16 あやうく図書館に行きそうになる。本日休館日。

BIG ISSUE421、特集は「となりのコロナ」。編集者、作家、医師、社会事業家ら10人がこの2年の生活や体験、考えたことを語る



 12.17 午後から風強く、一気に冷える。夕刊、大阪ビル火災記事、無惨。

 12.18 仙台古本屋さんから注文品到着。いろいろオマケ、ありがとう。

 


 12.19 朝のテレビニュース、女優急死事件。ご両親も有名人、小さい時から芸能ニュースで話題になってきた。うちの娘は同い年、誕生日も近いので、成長ぶりを重ねていたこともあった。

 

 関川夏央 『人間晩年図巻 2004―07年』 岩波書店 1900円+税



 この年に亡くなった、と明確に覚えている人がいる。あの年に亡くなっていたのか、と思い返す人もいる。本書で名前と人となりを知った人も。

 関川は故人を偲び、周縁の人々も取り上げて、あの人、あの時代を思い出させてくれる。

 帯に関川のことば。

〈いつが「晩年」なのか本人にはわからない。/死んだらわかる。それまでは他人の「晩年」を読んで、たのしくお過ごしになられるがよい。〉

(平野)

2021年12月16日木曜日

最後に残るのは本

 12.12 「朝日歌壇」より。

〈貸した本に夢二のブックカバーかけ返してくれる君には敵わず (東京都)上田結香〉

「朝日俳壇」。

〈著者逝けり冬立つ書架に愛読書 (岡山県里庄町)藤井雅史〉

〈秋ともしばかものよと詩に叱らるる (石川県能登町)瀧上裕幸〉

   家人、予定より早く帰還。

 12.13 天気予報で寒波襲来と聞き覚悟していたが、それほどでもない。北国は予報どおりの様子。

 仕事帰りの電車、乗り越しそうになる。いつもは一つ前の駅で読書をやめるが、今日はもうちょっと、それが危なかった。ひと駅先でも家はちょうど中間なのだけど。

 京都善行堂から注文品着。仙台古本屋に〈仙台本〉注文。



 12.14 新聞の訃報、親しんだ歌謡曲と漫画。作曲家・鈴木淳、漫画家・古谷三敏、ご冥福を。

 図書館で元町原稿学校調べ。「ひょうご部落解放」原稿送信。

 本屋さんでかわいい絵本孫に自慢しようと思うけど、こういう時はかかってこない。ヂヂバカちゃんりん。

 

 『最後に残るのは本』 工作舎編・発行 2500円+税



 工作舎50周年記念出版。19798月から出版物に新刊案内冊子「土星紀」を挟んだ。同社のシンボル・マーク「メビウスの輪を持つ土星」にちなむ。864月から連載エッセイ「標本箱」(本の標(しるべ)の箱という思い)スタート(20001月まで)。執筆者に〈一〇〇〇文字前後で「本」や「読書」を素材にしたものなら何でもという〉原稿を依頼。本書はその中から67編収録(杉浦康平の8編は別の単行本に掲載)。

 20年から30数年前のこと、本の世界はだいぶ変化したけれど、著者・編集者・読書人の書物への思いは変わらない。

 書名は詩人・多田智満子の文章から。98年キューバ訪問時、現地でもらった雑誌にフィデル・カストロの写真と記事があった。スペイン語は読めないが、ところどころ単語はわかる。「インターネットは本の死か」という文言が見て取れた。多田は(見当ちがいの見当かもしれないが、とことわって)カストロの次のことばににっこりした。

「最後に残るのは本だ。」

 自分が死んでも本は残る、作家が死んでも本は残る、という意味かもしれない。「いかにインターネットがはびこっても書物は最後まで残る」ということかも。多田は自由に解釈して楽しむ。

カストロは無類の読書家。ガルシア・マルケスと親交があり、彼が次々傑作を贈呈してくれるので、「おれを殺さないでくれ。読み出すと、つい徹夜してしまう」と言ったそうだ。

(平野)

2021年12月11日土曜日

カステーラのような明るい夜

 12.9 家人、目に年齢相応の故障あり、数日入院。掃除・洗濯命令。すぐに次の指令メール届く。

 花森書林でおしゃべり。

 林哲夫『古本スタイル 1』発刊。古書善行堂に発注。

「みなと元町タウンニュース」更新しています、352号。拙稿はやっと「若杉慧」にたどり着く。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/2021/12/02/townnews352.pdf

 

 12.10 朝いつもの起床時間、家人に叩き起こされる夢で目覚める。無意識目覚まし時計。予定より早く退院できるらしい。

仕事終わり、駅チカで晩飯おかず鯖塩焼き買って帰る。姉孫がヂヂ生存確認電話くれる。天王寺クッスーからメール、神戸営業訪問の由。

 

 尾形亀之助著 西尾勝彦編 『カステーラのような明るい夜』 

七月堂 2000円+税




 尾形亀之助(190042年)、宮城県生まれ、詩人。幼時から喘息の持病。裕福な家庭の生まれだが、最期は孤独死同然(餓死とも)だった。雨、夜の詩が多い。

「十二月」という詩2編。

〈炭をくべているせと火鉢が蜜柑の匂いがする//曇って日が暮れて/庭に風が出ている〉

〈紅を染めた夕やけ//風と/雀//ガラスのよごれ〉

 書名は「明るい夜」から。

〈一人 一人がまったく造花のようで/手は柔らかく ふくらんでいて/しなやかに夜気が蒸れる//煙草と/あついお茶と//これは――/カステーラのように/明るい夜だ〉

  編者も詩人。

 挿画、保光敏将。装幀、クラフト・エヴィング商會。

(平野)