2021年12月16日木曜日

最後に残るのは本

 12.12 「朝日歌壇」より。

〈貸した本に夢二のブックカバーかけ返してくれる君には敵わず (東京都)上田結香〉

「朝日俳壇」。

〈著者逝けり冬立つ書架に愛読書 (岡山県里庄町)藤井雅史〉

〈秋ともしばかものよと詩に叱らるる (石川県能登町)瀧上裕幸〉

   家人、予定より早く帰還。

 12.13 天気予報で寒波襲来と聞き覚悟していたが、それほどでもない。北国は予報どおりの様子。

 仕事帰りの電車、乗り越しそうになる。いつもは一つ前の駅で読書をやめるが、今日はもうちょっと、それが危なかった。ひと駅先でも家はちょうど中間なのだけど。

 京都善行堂から注文品着。仙台古本屋に〈仙台本〉注文。



 12.14 新聞の訃報、親しんだ歌謡曲と漫画。作曲家・鈴木淳、漫画家・古谷三敏、ご冥福を。

 図書館で元町原稿学校調べ。「ひょうご部落解放」原稿送信。

 本屋さんでかわいい絵本孫に自慢しようと思うけど、こういう時はかかってこない。ヂヂバカちゃんりん。

 

 『最後に残るのは本』 工作舎編・発行 2500円+税



 工作舎50周年記念出版。19798月から出版物に新刊案内冊子「土星紀」を挟んだ。同社のシンボル・マーク「メビウスの輪を持つ土星」にちなむ。864月から連載エッセイ「標本箱」(本の標(しるべ)の箱という思い)スタート(20001月まで)。執筆者に〈一〇〇〇文字前後で「本」や「読書」を素材にしたものなら何でもという〉原稿を依頼。本書はその中から67編収録(杉浦康平の8編は別の単行本に掲載)。

 20年から30数年前のこと、本の世界はだいぶ変化したけれど、著者・編集者・読書人の書物への思いは変わらない。

 書名は詩人・多田智満子の文章から。98年キューバ訪問時、現地でもらった雑誌にフィデル・カストロの写真と記事があった。スペイン語は読めないが、ところどころ単語はわかる。「インターネットは本の死か」という文言が見て取れた。多田は(見当ちがいの見当かもしれないが、とことわって)カストロの次のことばににっこりした。

「最後に残るのは本だ。」

 自分が死んでも本は残る、作家が死んでも本は残る、という意味かもしれない。「いかにインターネットがはびこっても書物は最後まで残る」ということかも。多田は自由に解釈して楽しむ。

カストロは無類の読書家。ガルシア・マルケスと親交があり、彼が次々傑作を贈呈してくれるので、「おれを殺さないでくれ。読み出すと、つい徹夜してしまう」と言ったそうだ。

(平野)