2014年4月3日木曜日

【海】史 大震災後(5)


 【海】史(24

 阪神・淡路大震災後(5
 
 
  止まるところを知らない大規模書店の出店ラッシュ、消費税や再販の動向。電子出版の将来、全てが厳しい状況へと雪崩をうって進んでいるように思えてならない。(略)
 規制緩和の大合唱のもと、まったく素朴な自由競争こそが、社会的な最大利益をもたらすという、神の見えざる手による予定調和が大手を振っている。
 競争による緊張が、活力となり新しい商品を生み、新しい市場を生み、富を生んできたのは確かなこと。と同時に過当な競争が地域を疲弊させ、不毛な競争の中で死屍累々となるのも、これも常である。

 95120日、神戸の書店にとって重要な会議がある予定だった。前年12月、京都の大書店「駸々堂」が兵庫県書店商業組合に1000坪での三宮出店を通告した。駸々堂・日販が出席してその説明がされるはずだった。大震災で会議は中止。三宮地区は大きな被害で、出店の話は立ち消えていた。
 4月、駸々堂・日販から再度出店申し出があった。三宮センター街は徐々に回復し、出店するセンタープラザも修復された。書店組合として、営業不能の店舗が数多くある状態で1000坪の出店を認めることはできない。しかし、出店を止めることもできない。規模の縮小を交渉するのみ。結局、事務所・通路スペースを広くして実面積900坪、9月開店となった。
 地元最大手ジュンク堂書店は三宮店が大打撃を受けていたが、全国に出店を拡大していく。同年、大分と鹿児島。96年難波、97年池袋と仙台。
 三宮では、流泉書房、漢口堂、日東舘書林が撤退した。コーべブックスは営業再開したが、系列の南天荘書店の店舗がすべて営業不能だった。
 震災後、【海】の営業成績は前に書いたように順調に伸びた。同じ被災地でありながら、再開できた・できなかったで明暗がはっきりと分かれた。コーべブックスもリニューアルして昔の賑いを取り戻した。しかし、震災不況のダメージが次第に重くのしかかってくる。この話は改めて。




写真は、日沖桜皮(ひおきかにわ)編『阪神大震災と出版』(日本エディタースクール出版部 199510月刊)。被災地の出版関係者(出版社、取次、新刊書店、古書店、運送、図書館)の報告集。書店の被害状況、運送状況、震災関係出版物など資料もあり。
 島田は「地域に生きる書店として」寄稿。営業再開への道のりと「アート・エイド」のボランティア活動について。

再版問題、大型店の出店問題で大揺れに揺れる業界で、商売の拡大努力もせず、地域にしがみついているだけでは生き残ってゆけないぞ、という叱責の声が聞こえてきそうである。「現代版かけこみ寺」などと文化人気取りしとらんと、本の一冊でも売れという声も聞こえる。ご批判は甘んじて受ける。個々の生き方がさまざまなように、これが当店の生き方の選択であるとしか言えない。

(平野)元町商店街HP連載「【海】という名の本屋が消えた」第5回アップしました。
http://www.kobe-motomachi.or.jp/