2014年4月11日金曜日

タルホ・スペシャル


 『タルホスペシャル』 別冊幻想文学(3) 幻想文学会出版局 198712月刊

目次

稀覯本グラフィティ

PART1 未知なるタルホを求めて
チンハツト氏とデドメン君の銷夏法
単行本未収録&ヴァリアント作品集  相馬先生の問題  郁さんの事  枕べの(きのこ) 

PART2 タルホニウム文学館
須永朝彦「少年愛の苦学」  鎌田東二「モノノケ・タルホトピア」
諸星翔、佐藤春夫、衣巻省三、矢川澄子、山尾悠子 他

PART3 タルホランド・ガイドマップ
私のタルホ体験  春山行夫 椿實 萩原幸子 他
タルホ紀行  赤井敏夫「タルホのいた三つの風景」
タルホ入門  高橋康雄 加藤幹也
稲垣足穂著書目録&書評選

[編集協力・資料提供] 高橋康雄・渡邊一考
[表紙絵] 梅木英治 
[編集人] 東雅夫

 
 


「郁さんの事」より

何や、郁さんの事か。郁さんとワイとは比較的最近やで。(略、神戸の詩の世界では有名だった)あれが神戸の竹中氏やと、いつぞや新宿の駅で教えてくれた人があったが、振り向くともう見えなんだ。(略)「あんな紅顔美少年が何や」「あんな気障なもん殴って了え」とか、こんな言葉は、昔から、郁さんについて聞いとった。が、会うてみたら、そうでもないな。そういう事を云う者は、竹中郁を知らんか、そうやなかったら頭の悪い男やな。郁さんは、その名の示すとおりの我日本の新らしき、海港の詩人やな。これは一人よりないな。……
(「文藝汎論」昭和112月 原文は正字・旧かな)
 足穂は関西学院の先輩にあたる。在学期はちがう。昭和7年(1932)12月堀辰雄が神戸に来た時(堀の小説「旅の絵」に書いている)、竹中は明石の足穂宅に連れて行った。足穂は東京から戻り、古着屋を営んでいた。その日をさかいに、二人の会話は「さよか」「そうや、そうや」、「郁さん」「タルちゃん」となったそう。

(平野)