■ 石橋毅史
『口笛を吹きながら本を売る 柴田信、最終授業
晶文社 1600円+税
装丁 寄藤文平+鈴木千佳子
柴田は神保町「岩波ブックセンター」代表、85歳、書店人生50年。『「本屋」は死なない』(新潮社)の石橋が3年にわたり聞き書き。
店名にあるように「岩波書店」と関係が深いが、現在は資本的なつながりはない。しかし、在庫の半分以上は岩波の本という人文書に特化した本屋。正式名称は「有限会社 信山社」。
柴田は1965年池袋の芳林堂書店入社。売り上げスリップによる単品管理をスタッフと考案し実行した。POSレジ出現以前のこと。78年信山社入社、現在会長。神保町ブックフェスティバルの中心人物。著書、『出版販売の実際』『ヨキミセサカエル』(日本エディタースクール出版部)。
書名は、芳林堂時代のスタッフが朝礼で話した言葉から。
「表向きは口笛を吹きながら売ろう。ということは、それを支える強い仕組みが裏側にある、ということね。そういうなかで仕事をしよう、と。そのためには帳面を揃えよう、品切れ本はリストにしておこうとか、本を売る、というようなことをちゃんと為してゆくための仕組みをつくっていった。
『本を売る』とはそういうものだ、っていうのが私の底にあるから、よその書店で『本のコンシェルジュ』とかって言葉が出てくると、ちょっと笑っちゃうんだよ。読者に何かを指南するとか、書店員が目立つ必要はない。……」
(平野)