お江戸で買った本。
■ 『世田谷文学館収蔵資料目録3 植草甚一関連資料』 世田谷文学館
同館の「植草甚一スクラップブック」展(4.25~7.5)の目録。
植草の自筆原稿、日記他、膨大なノート・メモを展示した。映画、小説、音楽に関するもの、それにコラージュ。
私は、植草のことを自分の好きなものを探究して楽しんだ人、と思っていた。ノートを見て、「狂気」ともいえる徹底さに驚いたが、やはり楽しんでいたこともわかる。
《一冊でもよけいに外国の本をよんで、出来るだけ覚書をつくり、出来たら、いつかこれらを整理して、まとまったものにして残したいのが私の唯一の野心である。いつ挫折するかわからない、しかし根気よくやつてみよう。よみ放したまゝでは何にもならないし、何時頃からか、私の読書のたのしみは、批判的なものが、ひどく、その中に混入しはじめてゐることに自分でも気がつくので、余けいに、覚書をつくる必要に迫られるのである。(後略)》(ノート「戦前のアメリカ小説覚書」1946年)
このノートではアメリカの小説21作品のあらすじ(原書を読んで)を書いている。
私がちょうど読んでいた『ちくま』7月号の鹿島茂「神田神保町書肆街考61」に、植草の1945(昭和20)年の日記が引用されている。植草は自宅を焼失したが、仕事の行き帰りに神保町でたびたび洋書を購入している。米軍の空襲が激化しているさなかでも、古書店は営業し、洋書を売っていた。
(平野)