■ 安水稔和 『竹中郁 詩人さんの声』
編集工房ノア 2004年6月刊
竹中郁生誕100年を記念した詩人論。カバー他装画は竹中のもの。
「詩人さんの声」は安水が『竹中郁詩集』(思潮社現代詩文庫、1994年)に書いた解説。
《四十年前、詩人のたまごであったわたしたち「ぽえとろ」の仲間は、竹中郁のことを詩人さんと呼んでいた。神戸で詩人といえば竹中郁。そこで詩人さん。今日町で詩人さんに会ったよ。詩人さんが元町通りを歩いていたよ。詩人さんが電車に乗っていたよ。どこででも詩人さんは目立った。若い頃からの見事な白髪。遠くからでも聞こえる闊達な声。竹中郁はずっと詩人さんでありつつけた。詩人さんからもらったパイプ煙草の丸いひらたい罐を手にとって赤い上ぶたを指で押さえると、詩人さんの声がきこえる。
火を欲しい人はないか
よい色の火です (「もらった火」冒頭)
亡くなって十年、神戸の街角を歩いていると、今日も詩人さんの声がはっきりときこえる。
「生きましょうよ」
向いあいのあなたとわたし「しゃべりつづけて生きましょうよ」 (「桃・麦・あなた」冒頭)》
■ 『海の本屋のはなし――海文堂書店の記憶と記録』 あれこれ(7)
『サンデー毎日』8月9日「著者インタビュー」で紹介していただいている。インタビュアーは河上進=南陀楼綾繁。全文はこちらで。
7.20「百窓文庫」での「平野とブックカバーを折ろう」特製ブックカバー
ポール・ヴァレリーの命日にちなみ、詩「海辺の墓地」の一句(原詩と英語訳、日本語訳3編)が印刷されている。
「海辺の墓地」は堀辰雄「風立ちぬ」の一文「風立ちぬ、いざ生きめやも」で有名。角川文庫の注釈では、
《作者が他の場所で書いた「風が立った。……生きなければならぬ」のほうが、原詩に近い。》
とある。
「百窓文庫」主宰者が選んだ訳は、
鈴木信太郎訳、「風 吹き起る……生きねばならぬ」
中井久夫訳、「風起こる……生きる試みをこそ!」山田兼士訳、「風が立つ!……生きてみなければ!」
(平野)