2018年3月13日火曜日

この星の忘れられない本屋


 ヘンリー・ヒッチングズ編 浅尾敦則訳

『この星の忘れられない本屋の話』 ポプラ社 1800円+税



 世界の15人の作家が本と本屋の思い出を語る。ヨーロッパ各地、アフリカ、インド、中国、アメリカ、コロンビア……、多くの作家が街の本屋で本の魅力を知り、その後の生き方を決めた。

〈作家にとっては、本屋というのは自分を変えてくれた場所である。だから、作家にお気に入りの本屋を訊ねると、たいていの人は、現在よく行く店ではなくて、ノスタルジアをかきたててくれる店を選ぶと思う。自分の出発点となった思い出の本屋だ。そして、作家になりたいという熱い思いを抱えて悶々としていた時代のことを思い出すだろう。〉(フアン・ガブリエル・バスケス、この人は著書が棚に並ぶ奇跡に思いを馳せていた。隣の本は多分マリオ・バルガス=リョサ、と)

本を探し読む喜び・楽しみを知ると、楽園であり秘密の花園、悪場所にもなる。悲しい寂しい気持ちを癒してくれることもある。知識や文化に触れる場所。同好の士や仲間に出会うかも知れない。新しい刺激を受けて目標を見つける人もいるだろう。その国の政治体制によっては民主主義の拠点になることもある。大層なことではなくても、ここにいれば幸せな気持ちになる、たくさんの人がいても自分一人の時間を持てる、ヒマ潰しにも最適。それが本屋。そんな便利でありがたい場所がどんどん少なくなっている。世界のあちこちも同じ状況。

 本書は本屋の素晴らしさを伝えてくれる。では、本屋を「思い出」の存在にしないためにはどうしたらいいか。

〈いまのご時世、繁盛する本屋になるためには、本を得る以外のこともいろいろやらなければならないというのが一般的な考え方だ。それでも、私が本屋に求めたいものといえばやっぱり、本そのものに対する情熱なのだ。それmぽ、入口に立って熱心に客を呼び込むという類のものではなく、ほかの店になない品揃えにするとか、自分の感性と信念を通じて本の世界を表現するという形で現れる情熱である。場合によっては文学作品の出版や復刻にまで本屋が関わるかもしれないという、そんな情熱である。〉(編者)

 本屋の頑張りに期待するだけでいいのか? 

(平野)《ほんまにWEB》「海文堂のお道具箱」更新。