■ 山田稔 『門司の幼少時代』 ぽかん編集室 2200円+税
門司は古くから海上の要衝で、日本有数の貿易港だった。京都に転校すると誰も門司のことなど知らなかった。
〈……この新興都市は、古い歴史と文化を誇る博多、熊本などにくらべ九州色が希薄だった。言葉からして九州訛がない。ここは物や人の出入りの盛んな貿易都市らしく土着性のとぼしい、どこかコスモポリタン的あるいは無国籍的なところの感じられる土地だったのである。〉
稔少年の活動域は家の周辺、「大久保越」という新興住宅地。たまに母親の買い物について行く市内の繁華街や隣の小倉、夏休みの家族旅行や母親の実家帰省。幼少時代の思い出は、四季折々家族のこと、近所の人たちのこと、友だちとの遊びや学校のこと。それから戦争のはじまり。担任の先生は出征して行き、自分も転校。卒業していないから同窓会などの案内は来ない。
〈そのような私の耳にも、土屋先生戦死の知らせだけはどこからともなく入ってきたのである。〉
読書雑誌『ぽかん』連載分に書き下ろしを加え、冊子「少年の港」も。
凝った装幀、「角背糸篝ドイツ装ホローバック仕上げ」というそう。(平野)
11.29 昼休み公園読書、寒さたまらず職場に戻る。
11.30 リニューアルオープンした神戸市立博物館の名品展。教科書にも出てくる「池長孟コレクション」南蛮美術を久しぶりに拝見。