2021年8月1日日曜日

尊皇攘夷

 7.23 元町原稿、久坂葉子最終回の予定。富士正晴の葉子追悼活動を追う。資料で葉子が生前、知人の新聞記者に竹中郁とのイザコザを語っていることを発見。竹中と葉子の父親は文化人サロンで親交があった。葉子の職の世話もしている。竹中が「VIKING」を批判。父親は葉子に売れない文学活動より結婚を期待、見合いを勧める。富士と竹中にどんな確執があったのか。富士の葉子宛書簡に、「VIKING」での発言・言動などに竹中が良い印象を持っていないのだろう、と書いている。竹中と富士の関係を探る。手がかりないと思っていたら、関西文学に詳しい林哲夫ブログにヒントがあった。

https://sumus2013.exblog.jp/23954952/

 『仮想VIKING50号記念祝賀講演会に於ける演説』(富士正晴記念館、2015年)。富士の講演嫌い。1949年倉敷で竹中と講演会。富士は7分ほどで降壇。竹中が一人で1時間半話した。講演会の詳細は不明で解決しない、何かむずがゆい。同時期の富士随筆に、倉敷の工場を見学したことが記されている。

 7.24 姉孫と図書館おはなし会。今日は落ち着きなく、ウロウロしたり寝っ転がったり。そういう日もある。

 

 7.25 「朝日俳壇」より。

〈梅雨深し本の匂ひにある昭和 (高松市)信里由美子〉

 7.28 早朝、寝床で微睡む私の額を踏む妖怪。飛び起きると、家人の手だった。前日2回目のコロナワクチン接種を受けた私を心配して熱がないか確かめたらしい。やり方が荒っぽい。

 7.30 妹孫生後2ヵ月。ますます飲んで寝て排泄快調。あやすと声を発する。姉孫はマイペース、にぎやかにダダをこねる。ヂヂバカチャンリン。



 NHK大河ドラマ「青天を衝け」の徳川慶喜役好演と聞く。『尊皇攘夷』を読み出す。

 片山杜秀 『尊皇攘夷 水戸学の四百年』 新潮選書 2000円+税


 

〈水戸学は尊皇攘夷の学問である。幕末維新を主導した思想である。しかし尊皇攘夷のうち、うしろの二文字はあとから付け加わったものと考えてよいだろう。〉

 水戸学の開祖は徳川光圀=黄門様。徳川御三家、天下の副将軍(正式な役職ではない)がどうして尊皇思想家になったのか、から話は始まる。光圀の生い立ち、藩が幕府に課せられた役割=負担、当時のアジア大陸の情勢=明から亡命してきた朱舜水の存在、何より大義を重んじる彼の歴史観。佐幕を正義とする「絶対の根拠」を突き詰めると尊皇になった。『大日本史』編纂は二百数十年かかった。

 幕末、水戸藩の沖合にも外国船が出没する。ペリー来航より四半世紀前に領民たちはイギリスの捕鯨船と交流していた。1824年、藤田幽谷の弟子・会沢正志斎が上陸した異国人を取り調べ、来航の真の目的は捕鯨ではなく植民地化、と判断。正志斎は直ちに『新論』を執筆、海防の重要性を説くが、禁書となる。吉田松陰が脱藩して水戸を目指すなど、志士たちが影響を受けた。著者はこの上陸事件こそが幕末の攘夷の原点、と言う。

 ドラマ・映画の黄門様、水戸の納豆、梅、近松の国性爺合戦、天狗党、三島由紀夫……水戸学を多角的に探り、近代日本のナショナリズムを解明する。

(平野)