2022年2月15日火曜日

第一藝文社をさがして

2.12 孫写真・動画着。荷物あけて、姉は絵本かかえる。妹は『はらぺこあおむし』のソックスを口に入れる。あおむし食べるな!

 



2.14 電車内と休憩時間に「みすず 読書アンケート特集」を少しずつ読む。毎年のことながら自分が読める本は少ないけれど、たまに読んだ本や読もうと思っている本があるととうれしいというか、安心する。日本人研究者が外国語で執筆した本が何冊も紹介されていて、そういう時代と認識。回答者に年末急逝された方がいらっしゃるし、同誌で連載されていた作家も昨年亡くなった。改めて合掌。

 孫電話。姉が『これはのみのぴこ』を読んでくれる。ページが進むにつれてどんどん早口になっていく。息つぎしろ!

 


 早田リツ子 『第一藝文社をさがして』 夏葉社 2500円+税



 早田は滋賀県在住、女性史研究家。友人の図書館司書から「第一藝文社」について問い合わせがあった。滋賀出身の詩人・北川冬彦(190090年)の書誌作成でその名があった。所在地は大津市。

1934(昭和9)年、発行人・中塚は大津で出版社創業。のち京都に移る。いけばな本、映画本、詩集などを出した。発行人の名は「悌治・道祐・勝博」と替わっているが、どんな関係か。早田は図書館のレファレンスを手がかりに調査に乗り出す。遺族を訪ね、各地の図書館・古書店で本を探す。

……社主の中塚道祐が出版社をおこした経緯や、映画書が多い理由、著者とのかかわりなどを調べる過程は、未知の世界を手探りで歩くような心もとないものだったが、新たな疑問や関心のおもむくままに旅を続け、結果的に彼の生涯を記録することになった。(後略)〉

 中塚はひとりで10年間(戦前・戦中)出版社を運営し、いけばなの機関誌をつくり、歌を詠んだ。彼の私家本歌集や家族への文章から、生い立ち、家のこと、いけばなのこと、書き手たちとの出会い、古本屋経営、北九州での暮らしなど実生活が浮かび上がる。早田はそこから彼の思想・精神を読み取る。

同社の映画書では伊丹万作、今村太平、詩集では北川、杉山平一、中江俊夫、天野忠らの名がある。織田作之助の小説の計画もあった。 

解説は京都の「古書善行堂」店主。ずっと「第一藝文社」に注目してきた。本書出版にも尽力。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

(平野)