2023年1月17日火曜日

書籍修繕という仕事

1.15 「朝日歌壇」より。

〈小春日の余りのやうな昼だから少し遠いが本屋へ寄ろう (茨木市)瀬川幸子〉

〈図書館の窓に蔦の葉紅かりきリルケが吾に歩み寄りし日 (羽村市)竹田元子〉

 

BIG ISSUE447号、巻頭「私の分岐点」は作家・平野啓一郎。

1歳で父の死、大学時代に作家デビュー どう生きればいいのかを考える糧、文学〉

 


1.17 阪神淡路大震災28年。

訃報、ミュージシャン・高橋幸宏、イタリアの俳優ジーナ・ロロブリジーダ。

 関西出張中のみずのわ一徳社主とお茶して、ギャラリー島田。スタッフさん相手に一徳独演会。

 

 ジェヨン 『書籍修繕という仕事』 牧野美加訳 原書房 

2000円+税



 著者は韓国の書籍修繕家。美大卒業後、グラフィックデザイナーを経てアメリカの大学院でブックアートと製紙を専攻。大学図書館で書籍修繕のノウハウを学んだ。2018年ソウルで「ジェヨン書籍修繕」開業。

〈書籍修繕家は技術者だ。同時に観察者であり、収集家でもある。わたしは本に刻まれた時間の痕跡を、思い出の濃度を、破損の形態を丁寧に観察し、収集する。本を修繕するというのは、その本が生きてきた生の物語に耳を傾け、それを尊重することだ。〉

 修繕は復元ではない。原本の破れた紙をつないだり、汚れを落とすのは「復元」だが、すべてを元通りにはできない。紙やクロス、活字、インクなど「復元」できない。元の痕跡を残しつつ、破損を直し、補強し、新しい装幀を施す。服のリフォームに近い。

 日本の本も登場。『カット図案集』(河野薫編、野ばら社、1978年)。表紙なし、ページ一部なし、背は真っ二つ、落書きあり。依頼人の母親の形見。記憶をつなげるため落書きを残して、の要望。対話を重ね、母親の人となりを探っていく。完成した本を手渡し、修繕部分をひとつずつ説明。依頼人は母との思い出を蘇らせる。



 人の「人生」と同じように、本には「本生」がある。

(平野)