1.21 近視で遠視(老眼)だが、本や新聞は裸眼で読めている。このところぼやけてきている。「技」が「枝」に、「愚者」が「患者」に見えた。おかしいと思って数行戻って読み直して気づく。「リストアップ」を「ストリップ」と読んだのはただ慌てもんのスケベヂヂ。
1.22「朝日俳壇」より。
〈読み初めや三度手に取る難読書 (名古屋市)池内真澄〉
〈読み初めにしづかな本を選びけり (名古屋市)池内真澄〉
「朝日歌壇」より。
〈図書館のリサイクル棚にミャンマーの抵抗の詩あり抱きて帰る (東京都)十亀弘史〉
1.24 寒波襲来。覚悟していたけれど、今日はまだまし。油断せぬよう。
■ 坂崎重盛 『荷風の庭 庭の荷風』 芸術新聞社 3000円+税
坂崎は荷風の作品を敬遠してきた。読まず嫌いだった。しかし、「不思議な人」として興味はあった。作品に植物が数多く登場し、江戸旧跡・地理・地形観察、散歩時の記録、四季の押し花、スケッチなどもある。
坂崎は大学で造園学を学んだ「理系」の人。「理系感覚」という補助線を使って荷風文学を読解。古本屋めぐりで入手した関係書物で理解を深めていく。
「荷風」の「荷」は蓮のこと。号「断腸亭」の「断腸」は断腸花=「秋海棠」、別名「相思草」。荷風は江戸の漢詩を愛読し、自らも漢詩や俳句を詠む。江戸末期は園芸ブームで文化人だけではなく、大名から庶民まで熱中したそう。荷風は江戸の情緒を受け継いでいる。また、荷風は庭掃除が好き。箒を持った写真に残っていて、本書に数葉掲載。
作家は風景や自然の美を文章にする。坂崎が例に挙げるのは「春のおとづれ」。荷風は庭の楓を見て、寒気、風を観察し、続いて女性美を想像する。
〈其如何にも自由な放縦な曲線の美しさは私をして直ちに浴後の女が裸體のまゝ立つてゐる姿を想像せしめた。〉
さらに荷風の筆は女性のエロティックな姿態を描き、再び庭の観察に戻る。
荷風はカメラを愛好。観察、記録、これも「理系感覚」。かなりあぶない趣味の写真を撮影している。
荷風が戦争に協力せず、自分の文学世界を守ったことは尊敬する。でもね、荷風が何を撮影したのかを知って、笑う、呆れる。
(平野)