2023年1月21日土曜日

書楼弔堂 待宵

1.18 5月末で「週刊朝日」が休刊のニュース。家人愛読女性誌も刊行ペースが隔月や季刊、不定期になりつつある。紙雑誌はますます縮小。

1.19 訃報、作家、精神科医の加賀乙彦。 

いろいろ用事、あっち行ったり、こっちに戻ったり。なんやかやかと動いているのがよい。本屋さん。来週寒波が来るらしいけれど、散髪も。

1.20 芥川賞、直木賞、ふたりずつ受賞。話題作になりそう。

「朝日新聞」生活欄の投稿コラム「ひととき」、絵本屋さん「グランマグランマ」開業の話。東京都江戸川区の加藤さん、御年69歳。友人とふたりで小さい頃からの夢を実現。

 


 京極夏彦 『書楼弔堂 待宵』 集英社 2100円+税



シリーズ3冊目、6年ぶり。時は明治30年代後半、日露戦争間近。東京の町場から外れた坂の上、寺の参道にあるらしい本屋弔堂。古今東西の書物、新聞、印刷物など何でもある。近在の者も噂でしか知らない。必要な書物を求めて様々な人物が店を探すのだが、なかなかたどり着けない。見つけてみると巨大な陸燈台(おかとうだい)のような建物。   

今回登場するのは、徳富蘆花、岡本綺堂、宮武外骨、竹久夢二、寺田寅彦、斎藤一。既に名を成している人もいれば、まだこれからの人も。それぞれに迷いがある。求める書物を手にできるか。外骨は本を売りに来た。

坂の途中、老人弥蔵が甘酒と芋を売っている。ただ店をあけているだけ、世捨て人のように暮らす。店の常連で酒屋の息子利吉が本の話や著名人の話を弥蔵にする。弥蔵は興味ないけれど、弔堂を訊ねる客が次々やって来る。彼らを案内し、彼らと店主龍典(りょうてん)の対話に参加することになる。話すことで弥蔵の素性がだんだん明らかになる。幕末の荒波に翻弄され、多くの人を殺めた。家族も故郷も捨てた。世間にも開化にも背を向ける。己に正義はあったのか、と問う。

利吉は職を求めフラフラ暮らしているが、弥蔵の過去をうすうすわかっていて、何かと気を遣う。

登場人物たちが戦争論・反戦論を述べる。戦争が迫っている。

装幀、菊地信義+水戸部功。

(平野)京極は作家デビュー以前グラフィックデザイナー。雑誌「FMステーション」の仕事をしていた。北村薫『水 本の小説』(新潮社)より。