2023年2月14日火曜日

貸本屋おせん

2.11 午前中図書館、「西村旅館」調べ。貫一訃報記事探す。

午後は東灘区までギャラリー島田スタッフの資料拝借に同行。昨年亡くなった精神科医と親交された英文学者を訪ねる。本の山の仙人か、はたまた魔法学校のプロフェッサーか。庭に小さなお社あり、玄関入ればドードー鳥がお出迎え。故人の書簡や冊子を開いて、詩を通じた知的交流の一端を話してくださる。ギャラリー3月の企画展が楽しみ。私は懐かしの海文堂書棚と対面。閉店後引き取っていただいた。普通の家には入らない高さ。

2.12 「朝日歌壇」より。

〈気散じに出てきただけの駅ビルに糖分塩分控え本買う (豊橋市)滝川節子〉

 今日も図書館、貫一訃報探し。

2.14 訃報。人形作家・辻村寿三郎。

 

 高瀬乃一 『貸本屋おせん』 文藝春秋 1800円+税



 100回オール讀物新人賞受賞。

 江戸文化年間、おせんは貸本の荷を背負い歩く。書物問屋から仕入れる新本や錦絵、古本、蔵書家の本を書き写した写本。本を貸すだけではなく、本探し、恋のとりもち、殺人事件、滝沢馬琴新作の板木盗難、女郎の足抜けなどなど、事件に巻き込まれ、首を突っ込み、助けてくれる男共をあしらいながら、解決に一役買う。

 父は「後れ毛平治」と呼ばれた彫師だったが、お上の出版統制によって罰を受け、職を失い、自殺。おせんに禁書を遺した。おせんにも役人の目が光る。

〈この世に出まわっている本を、ただけしからんという理屈だけで消しさってはいけないと、せんは思っている。/本は一場にたわむれだ。ありもしないことを、さも当たり前のごとく書き記した本や絵巻は、人の目にふれなければ無いに等しい。だったら無くてもいいと御公儀は断ずるのだろうが、ささやかなたわぶれ心によって、町の民びとは生きる希(のぞ)みを得ることもあるのだ。〉

(平野)時代物、次作が楽しみな作家さんが続々。