2023年2月19日日曜日

進駐軍を笑わせろ!

2.15 「熱風(ジブリ)」2月号〈追悼渡辺京二〉。若松英輔「光の思想家」。編集部「ありがとう渡辺さん」。



 娘から宅配便あり、いっしょに姉孫の手紙、かわいいシールいっぱい。

2.16 図書館の蔵書検索で出てこない本。司書さんに問い合わせると書庫にあり。西村貫一関係書、出してもらえた。ルンルンだが、一度には読めない。何回も通わなくては。

 午後買い物に出て、寒い、元町駅前でBIG ISSUE449。本屋さん、単行本と文庫各1冊。レジは数ヵ月ぶりに刈り上げさん(私が勝手に呼ぶだけ、現在は頭刈り上げていない)に当たって挨拶。



2.18 午前中臨時出勤。午後図書館、貫一続き。宝物のような文章が続々出てくる。早く紹介したいけれど、時間かかる。

2.19 「朝日歌壇」より。

〈廃校に一人残され本を読むさびしからずや庭の金次郎 (船橋市)清水渡〉

 

 青木深 『進駐軍を笑わせろ! 米軍慰問の演芸史』 平凡社 3800円+税



 戦争が終わっても兵士たちはすぐに帰国できない。不満解消、ストレス発散のため、米軍はまず自前で娯楽を用意した。本国から芸能人を呼んだり、兵士自身が芸を披露したり。そのうち日本の芸能人が招かれ、日本人による芸能人斡旋会社が組織される。日本交通公社も参入した。

 戦後日本の若いミュージシャンたちが米軍基地や外国人クラブで演奏して、腕を磨き、プロデビュー、という話はよく聞く。昭和戦後のスターたちが誕生した。ことばの説明なくても受け入れられる。提供された芸能のうち7割は「軽音楽」分野だった。ところが、本書では歌舞音曲は最後に紹介。ことばの壁を越えて異国の兵士たちを笑わせ驚かせ(帯には「涙させた」も)バラエティショーの芸人たちがいた。

 ベテラン芸人と弟子、子ども含む家族、日系人、アメリカ帰り、様々な芸人が活躍した。紙切り、ジャズ漫画、奇術、曲芸、百面相、腹話術、太神楽など、寄席では色物と呼ばれ、トリの落語を盛り立てる芸。頭だけで逆立ちしてそのまま階段を登る、という芸もあった。

 著者は1975年生まれ、都留文科大学教授、歴史人類学、ポピュラー音楽研究。芸能関係誌紙、米軍人向け新聞、アメリカの新聞を掘り返し、博物館にも足を運ぶ。当時の芸人や弟子に取材、彼らの芸を書き残す。

 太神楽は伝統芸で、単なる曲芸ではない。獅子舞や歌舞伎のパロディ劇、楽器に歌に踊りもある「総合的な芸能」。長年の修業、稽古を重ねた末の多種多様な芸で長時間飽きさせないし、短い時間でもできる。バランス芸などの曲芸は海外にもあるから兵士たちも楽しめた。昭和平成の人気芸人、海老一染之助・染太郎は日本語の掛け声と英語的合いの手で演じた。

〈つまり、彼らはただ曲芸師であるだけでなく、「万芸の人」でなければならなかった。しかし一舞台が一五分程度のショーでは、たとえ「万芸の人」であったにしても、それを存分に活かすことは難しい。むしろ「一芸」をコンパクトに見せることが求められ、戦後の米軍慰問ショーでは、その需要に「太神楽の曲芸」が見事にはまったのだ。〉

 バラエティというと、テレビ番組でお笑い芸人さんが面白話をしている。でもね、ほんとうは本物の芸のこと。アスリート、アーティストである。

(平野)