2026年8月9日日曜日

三鬼

8.6 日本の夏は敗戦の夏。えらい人ほど改めて不戦の誓いを。

林哲夫さんのnote記事で728日渡辺一考さん逝去を知る。コーべブックスの編集長、南柯書局主宰、幻想文学や俳句の限定本を見事な書物に作り上げた。古書蒐集でも知られる。また、東京でバー「ですぺら」を経営(のち西明石に移転)。私はコーべブックス新米書店員だったので編集部に関わっていないけれど、酒の席は何度かご一緒した。別のSNSで神戸新聞訃報記事があり、本名は一孝(かずたか)と知る。喪主である「妻」にコーべブックス先輩の名。落ち着くところに落ち着いたのだと想像する。ご冥福を祈ります。

8.8 図書館、ハーンさんのこと。

BIG ISSUE532号、特集〈非戦・平和へ。集いと対話〉。表紙とインタビューはミュージシャンのSUGIZO、環境・平和・人権問題など精力的に活動する。



8.9 「朝日歌壇」より。

〈「茶の本」も「風姿花伝」も百円だ学生時代の岩波文庫 (高崎市)小島文〉

 私の時代は☆印で表示。☆ひとつ50円だったのが、だんだん上がっていった。

 

 小林恭二 『三鬼』 講談社 2500円+税



 太平洋戦争開戦前、日本は中国との戦争からさらに南方進出をめざし、国内では文化・思想を厳しく統制・弾圧していた時代。主人公は新興俳句のスター・西東三鬼。1940年(昭和15)「京大俳句事件」。治安維持法違反で三鬼の仲間が一斉検挙された。戦争や社会主義を題材にし、退廃趣味や性までも詠い込む。「戦争が廊下の奥に立つてゐた」の渡辺白泉も同人。しかし、なぜか中心人物の三鬼は逮捕されず、特高の尾行がつく。一方陸軍が彼を護衛。陸軍がなぜ? 

著者・小林の筆はどこまでが史実で、どこからがフィクションか不明。三鬼の実家である美作の齋藤家は室町時代からシンガポールで交易し、同地の華僑と義兄弟の契りを結んでいた。江戸時代途切れたものの、明治になり復活。三鬼が彼の地で歯科医を開業したのもその一環。陸軍は南方への足掛かりとして三鬼のコネクションを求めた。インド独立運動もからむ。

また、小林は俳句弾圧について、当局の狙いは新興俳句ではなく、伝統俳句の総帥・高浜虚子と300万人の愛好者を軍国体制の完全協力者にすること、とする。

三鬼は女性にもて、家族と別れ、社交界、ゴルフ、ダンスを楽しむ不良中年。特高に狙われ、陸軍から誘われる。愛する女性・市子は結核末期、そばにいたい。獄中の俳句仲間を思えば特高に降るべきだが、命が危ない。陸軍に従えば助かるが、外地の義兄弟たちが滅亡する。

40831日、三鬼は鎌倉に友を集め、市子との結婚披露パーティーを開く。三鬼の決断はいかに? 

小林、17年ぶりの新作小説。

(平野)