2015年3月22日日曜日

岡本 わが町


 中島俊郎編 『岡本 わが町 岡本からの文化発信』 神戸新聞総合出版センター 1800円+税

目次
はじめに――弥生文化とモダニズム文化が交差する街
第1章     岡本の歩み――住宅開発から生れた街並み
岡本の基層、扁保曾塚(へボソ塚)  地図から見た岡本と梅林  阪急岡本駅、摂津本山駅  石畳の街  いしだたみ君  モダニズムの街
第2章     岡本をめぐる人々
増田太郎右衛門  久原房之助  本田順太郎  平生釟三郎  谷崎潤一郎  笹部新太郎  長谷川三郎、寿岳文章、中井久夫
第3章     岡本の時を刻む
素盞鳴神社  二楽荘  甲南学園  本山第一小学校  本山第二小学校  本山中学校  岡本公会堂  だんじり祭り
第4章     岡本に暮して――共鳴する声と声
第5章     絵画、文学に現れた岡本
梅の街、岡本――「岡本梅花見図」  阪神大水害  谷崎潤一郎『細雪』、「陰翳禮讃」  水上勉『櫻守』
あとがき
 
 岡本という地域に住み、住民としての生活、生きてきた証し、心にふれた出来事などを書いてみよう、というのが本書のきっかけであった。
 岡本は芦屋と住吉の間にはさまれた、人口一万人足らずの小さな街である。岡本に半世紀暮らし、個人一人ひとりの姿勢、意見、生き方を根本にすえながら、お互いが共有できる「ひとつの歩み」を、本書で示すことができれば、その目的は果たせたと考えていいのではないだろうか。
 これは岡本という町のいわば〈自分史〉、〈個人史〉なのである。郷土史というような大上段に構えるつもりなどさらさらない。しかし、岡本に暮してきただけの感想に過ぎない、とは考えてはいない。住民が互いの意見を共有することで、自らを見直すきっかけを提供し、この土地に住むということを確認したいものだ。
 岡本という鄙なる地域にまで、グローバリゼーションの波は押し寄せている。全世界をおおっているこの波はすべてを均一化してしまう強力な昂進力を発揮している。生活の至便性に資すかもしれないが、個人の多様な生き方をも圧迫するという危機感を私たちはいつも感じざるをえない。
 本書の中に響くたような声こそ、岡本という「地域の声」なのである。ささやかな声でしかないが、過去と現在を結ぶ「着実に届く声」なのだ。市史とか区史などの「大きな声」ではなく、自分たちが暮しているような小さな地域から、今後、様々な声があがるのを期待している。(略)

 

「岡本」といえば、閑静な住宅街、大学生が多い街、おしゃれな街、というイメージ。しかし、ここに長く住んできた人たちは危機感を持つ。
 編者は甲南大学英文学教授。岡本で生まれ育ち住み、学び教え研究している。21日、岡本公会堂での出版記念会で講演。本書の目的と意図、地域の歴史、「まち」の未来像を語った。地域の暮らしを支えてきた商店が廃業していき、「まち」の社会基盤が失われていく不安も。例のひとつに【海】の閉店を取り上げてくださった。

(平野)
「ほんまにWEB」連載〈奥のおじさん〉更新。今回早い。
http://www.honmani.net/