■ 辰野隆 『忘れ得ぬ人々と谷崎潤一郎』 中公文庫 820円+税
解説 中条省平
恩師・学友他、露伴、漱石、鴎外、荷風、太宰らとの交流を語る自伝的随想集。
底本は『辰野隆選集第四巻』(1949年、改造社)と『辰野隆随想全集1』(1983年、福武書店)。
辰野隆(たつのゆたか、1888~1964)、東京生まれ、フランス文学者。東大仏文科の門下生に、渡辺一夫、小林秀雄、三好達治、森有正他俊英多数。谷崎とは府立一中で同窓。辰野が1学年上だったが、谷崎は3年を飛び級で4年に編入され同級になった。
谷崎は小学生時代に西行論を雑誌に投稿していた。秀才ぞろいの一中でも華やかな存在で、1年生の時から学友会雑誌に漢詩、評論を寄稿。
谷崎は――両手を上衣のポケットに突込み、すこし前こごみで、眼を光らせながら、のそりのそりと歩いている形が――何処やら野良猫に似ていた。(略)然し此の猫、ただの猫ではなかった。その時分から既に虎になりそうな勢いを事ある毎に示していた。而も竟に虎となり、嵎を負うて時に長嘯しているのだ。
孟子の言葉を引いて谷崎の才能を賞賛している。辰野は谷崎作品を「特別な愛著と敬慕の念を持して読み通して来た」。
戦時下、谷崎『細雪』は雑誌発表段階で中止。昭和19年7月上巻を自費出版する。
……僕は彼から非売品『細雪』上巻を贈られて、旱天の慈雨の如き悦びを味わった。竟に文化国家となり得なかった日本の軍閥官僚政府の弾圧があらゆる新聞、あらゆる雑誌の全面を便乗小説の巣窟たらしめ、真の文芸家、真の読者は只今長大息をもらす他はなかった際に、自費出版の『細雪』が如何ばかり我等の心境をうるおしたかは著者の与り知らぬところであったろう。が然し、我等は――少くも僕は――この『細雪』と秋声の『縮図』あるが故に海内の文章未だ地に堕ちずと観じたのである。(略)
フランス文学と比較しながら、谷崎作品を論じる。
(平野)
「朝日」3.4夕刊。「梅田書店戦争」。新しい大型店が出るたびにこんな記事が載る。
新店進出の一方、旭屋本店再出店断念他、閉店・撤退も記されている。東京ではリブロ池袋本店の6月閉店が発表された。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150304-00000008-mai-soci
http://www.honmani.net/index.html
元町商店街HPも更新していました。
http://www.kobe-motomachi.or.jp/