■ 碧野圭 『書店ガール6 遅れて来た客』 PHP文芸文庫 660円+税
解説は古本ライター・書評家の岡崎武志。小説にも重要人物として登場する。
舞台と主人公は前巻と同じ。茨城県取手市の駅構内にあるチェーン書店支店と店長宮崎彩加(あやか)。会社の体制が変わり、彩加の店は4ヵ月後閉店と告知されるが、まだ仲間に公表できない。入荷数を減らし、返品し、陳列を変える。アルバイトの補充もできない。ワンオペというひとり勤務体制時間も長い。彩加は苦悩。彼女を救うのは、友人に誘われたブックイベントで出会った本のことば――花森安治の「世界はあなたのためにはない」。
静岡県沼津市で彩加の伯母が本屋を経営しているが、その店の今後、彩加自身の将来についても何らかの結論を出さなければならない。作家デビューした青年・田中が彩加の店でアルバイトをしている。彼は元々ひきこもりがちだったが、仕事も気配りもでき信頼されている。彼の担当編集者小幡伸光(本シリーズレギュラー)は作品のコミック化・アニメ化で関係者たちと衝突、ついに胃潰瘍で倒れる。田中が小幡のために一歩踏み出す。
懸命に行動する人ほどトラブルにぶつかり、傷つく。登場人物たちはまわりの人たちの励ましや応援で前に進むことができる。
さて、書名にある「遅れて来た客」とは? 閉店の日のこと。読む楽しみにしてください。
(平野)
閉店は辛い。私は2回経験してますよって。仲間には倒産を経験した人もいる。本の現場で、不安定な条件でも本が好き・本屋が好きというだけで働いている人たちがいる。彼らのおかげで本に出会えている。