2017年7月25日火曜日

国芳一門浮世絵草紙


 河治和香 『国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ』 小学館文庫 2007年初版(20122刷)
 

 718日、幕末から明治に活躍した絵師・河鍋暁斎の〈これぞ暁斎!〉展(美術館「えき」KYOTO)を見て、梅田で用事。その前に堂島の古書店〈本は人生のおやつです!!〉に寄る。店主大推薦時代小説シリーズ平積み中。版元に直接注文して展開、特製オリジナル帯まで制作。 
歌川国芳の娘・登鯉(とり)の恋と成長を中心に、幕末に向かう緊迫した時代の自由人の物語。
登鯉は15歳になったばかり、「凛と張った目元が涼やかで、どこか近寄りがたいような雰囲気がある」。下っ引きに禁制の化粧をしていると因縁をつけられても片肌脱いで啖呵を切る。通りかかった奉行に「競肌の侠風娘(きおいはだのきゃんふうむすめ)」と呆れられる。
国芳は奢侈禁止令や出版統制に抵抗して、あの手この手で風刺画を描く。弟子たちも個性豊か、江戸文化・風俗と町人のエネルギーが溢れている。
 
《人々は、歌川一門の中でも、弟子の数では歌川国芳が一番多いという。たしかに頭数だけでいえば、国芳の師の豊国や、兄弟子の国貞、同門の広重の一門を、はるかにしのいでいる。/だが、実際のところ……門弟たちが群がる国芳の家の様子は、まるであぶれ者の吹きだまりだ。》
 
第一話「生首」に幼い頃の河鍋暁斎(周三郎)登場。本書には暁斎の絵も載っている。7歳で国芳に入門。
 
《周三郎は、熱心な弟子で、いつも写生や模写ばかりしている。/毎日毎日、根気のいる模写を熱心にできるのは、子どものうちだけだと、国芳は入門した子に必ず、いやというほど模写と写生をさせるのだった。》
 
さて、師の教えに忠実な周三郎が拾ってきたものは?
 
 
 

 著者は03年『秋の金魚』(小学館)でデビュー。
(平野)