2021年3月23日火曜日

『細雪』とその時代

 3.20 新聞折り込みに「花森書林」宣伝チラシ。なかなかおじゃまできない。




 3.22 編集工房ノアの「海鳴り 33届く。

夜、孫からLINE電話、ヂヂに絵本を読んでくれる。池谷陽子『じいじとぼく』(こどものとも年少版 2020.9月号、福音館書店)。ヂヂバカチャンリン、大喜び。

 




 川本三郎 『細雪』とその時代 中央公論新社 2400円+税

 私は谷崎を、変な性嗜好の爺さん、と思う。でもね、『細雪』に「性」表現はない。「女性たちのたおやかな物語」「つねに女性の優しさ、美しさ(時にはその残酷さも含めて)愛し続けた女性の讃美者、谷崎ならではの女性たちへのオマージュ」。

〈『細雪』は、いまは没落した大阪、船場の旧家の四姉妹の行く末を見つめた家族小説である。政治家も軍人も登場しない昭和の物語である。女性が主人公だから、家庭が主たる場になり、日々の暮しが丁寧に描かれてゆく。見合い、結婚、あるいは子育て、子供の病気。女性を通して昭和の暮しが浮かびあがってくる。(後略)〉

船場に代表される商都大阪、京都の雅、ハイカラな芦屋・神戸、関東大震災から復興する東京など、近代都市の文化を背景に旧家の栄華と没落を描く。

谷崎は昭和の戦争を直接には書いていない。脇役たちに語らせる。主人公たちは戦争とは無縁のところで生きている。

谷崎は他の著名作家たちのような戦争協力をしなかった。戦争反対とも叫ばなかった。ただただ己の文学・芸術にこだわった。その『細雪』でさえ雑誌に掲載できなくなる。戦時中も執筆を継続した。

著者は、脇役たち、都市、女性とモダニズム、災害、病など、谷崎が散りばめた細部から解説してくれる。

(平野)