3.27 先週雨でさぼった高槻墓参。好天、JR沿線の桜爛漫。ターミナル駅は人出多。
「朝日新聞」別刷り「be on Saturday」に大阪の「隆祥館書店」二村さん登場。〈心を渡し、支える最強の本屋〉。
同紙連載、原武史「歴史のダイヤグラム」。谷崎潤一郎が東京・大阪往復に夜行列車愛用のこと。
3.28 ちょうど読んでいる本、小谷野敦『谷崎潤一郎伝 堂々たる人生』(中央公論新社、2006年)。谷崎が若き日神経症に陥り、10年ほど「汽車恐怖症」に苦しんだことが明らかにされている。本書は、谷崎の人間像に迫る。書簡、来簡、随筆などから谷崎の「実人生」を再現する。家族問題で苦労が絶えなかった。
〈弟妹に対してできるだけの面倒を見ながら、あまりの負担の大きさから音を上げる谷崎、友人としてつきあっていた者でも、小物だと思えば見捨てる谷崎、好色で神経質で、しかし豪胆で時に思いやりある谷崎、藝術家と実務家の両面を兼ね備えた谷崎先生。初期には自然主義に抗い、中年期にはプロレタリア派の攻撃に逢い、妻譲渡事件と人妻との密通で世間から指弾され、ようやく生活が安定すると今度は一転して軍部の弾圧に逢い、戦後は猥褻文学者として非難を受けながら、自己を信じぬき、時にはおそらく何らかの巧妙な策略を用いながら常に第一線の作家として生き抜いた谷崎先生を、文学者の端くれとして、あるいは人として、私は畏敬する。(後略)〉
(平野)