2021年3月7日日曜日

センチメンタルジャーニー

  3.6 「花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸」展、神戸ゆかりの美術館(314日まで)。

花森は1911年武庫郡須磨村(現在神戸市須磨区)生まれ。

花森が描き続けた表紙原画の他、神戸・大阪に関する記事・写真展示。73年私的旅行で撮影した神戸港周辺の16ミリフィルムを上映。関連する同美術館所蔵の神戸風景絵画も。

 図録は展示ほぼ全点紹介。本誌1世紀71号(63年)の「KOBE 日本紀行 その1 神戸」(全21ページ分)がありがたい。

 


 北村太郎 『センチメンタルジャーニー ある詩人の生涯』 草思社文庫 

900円+税



 北村太郎(19221992年)、詩人。47年、鮎川信夫、田村隆一、黒田三郎らと「荒地」創刊。本書は自伝。生い立ちから詩のこと、詩友との出会い、戦争、結婚、妻子の死、恋愛……

 単行本は1993年同社より。90年出版企画の時点、既に北村はガン発症。北村はシャイ、詩人・正津勉が長い時間をかけて話を聞き、その速記原稿に北村が筆を入れる。原稿が少しずつ編集者に渡される。928月その編集者がガンで急逝。10月北村も息を引き取る。残った北村自筆原稿100枚と速記原稿400枚、未完のまま出版した。

 戦争中、北村は海軍で暗号解読の任務にあった。アメリカの暗号は複雑で解読できなかった(むこうは日本側の暗号を全部解読した)。暗号通信の解析で敵艦隊の動きはわかったそうだが、情報をあげても日本は攻撃するにも守るにも飛行機も爆弾もなかった。いまさらながら呆れる軍国。

それは別にして、北村は詩に暗号のような言葉遊びを施している。ある詩には恋人への愛の言葉を組み込んでいる。56歳の恋、相手は少年時代からの友の妻。この恋愛については関係者たちも本に書いている。

 書名は北村の詩「センチメンタル・ジャーニー」にちなむ。

〈もともとぼくは「センチメンタル・ジャーニー」と題をつけるくらいだから、そのようなタイプの詩を書いているけれども、感情的と感傷的とでは日本語としてずいぶん違うと思うんです。センチメンタリストというのは感覚的な人間であるということです。それでいえば、老年の入口に入って、感覚なんてものが新鮮になりようもないのだけれども、自分としては若い人とつきあっておもしろいし、街を歩いていても我ながらおもしろい感覚で街を見ているなという気もしたんです。(後略)〉

 夜、テレビの何度目かわからない寅さん映画で、家庭ある者同士の恋を歌う島唄が流れた。恋は熱く燃えても、辛い。想像だが(関西では断言しておいて、しらんけど! と言う)。

(平野)