2022年7月5日火曜日

地下出版のメディア史

7.2 みずのわ一徳社主、用事いろいろ来神。帰りの時間までちょっと一杯。出版、農の話拝聴。

「みなと元町タウンニュース」359号着。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/2022/07/03/townnews359.pdf

NR出版会新刊重版情報」7.8月号着。連載〈を届ける仕事〉は栗原哲也(日本経済評論社会長)「翔べ心、本はその翼だ――JRC後藤克寛さんを偲んで――」。後藤さんは518日逝去、書籍取次会社「人文・社会科学書流通センター(JRC)」創立者のひとり。

http://www.nrpp.sakura.ne.jp/top.html

7.3 「朝日歌壇」より。

〈たのしみは学きゅうぶんこさがしだすおきにいりの本五十さつ目 (大阪市)おくの花純〉

〈この国の本屋もやうやく消えどまりううんとでかいか小さきままか (長野県)沓掛喜久男〉

〈ひとりづつ体を横にして入る神田の古書店に稀少本待つ (町田市)村田知子〉

 元町「こうべまちづくり会館」で期日前投票。


 大尾侑子 『地下出版のメディア史――エロ・グロ、珍書屋、教養主義』

 慶應義塾大学出版会 4500円+税


 

 著者は桃山学院大学社会学部准教授、社会情報学。姓の読みは「おおび」。検索すると、東京経済大学に移られたよう。

〈出版産業が近代化し、大衆への読書行為が普及した一九二〇年代を分岐点として、日本では読み物に対する「高級/低級」、「正統/非正統」という序列化がなされていった。〉

 知識人は「高級雑誌」=総合雑誌や岩波書店などの教養主義的書物、労働者は講談雑誌や『キング』他の大衆雑誌、というように。

昭和敗戦後の物不足の時代にカストリ雑誌と言われた雑誌があった。粗末な紙、内容はエロ・グロ、2030円(「週刊朝日」が1円、『値段史年表』朝日新聞社1988年)。活字に飢えた男たちが回し読みしてボロボロになるまで読まれたそうだ。貧乏学生は買えない。でも岩波文庫なら買える。知的・教養への憧れがあり、見栄もある。

では、低俗・低級な書物は読書に値しないのか? 読書は序列化されるものなのか?

 本書は「高級」「低級」という単純な図式ではなく、「高級文化としてのエロ・グロ」という文化・歴史研究、教養主義に基づいた出版活動に光を当てる。

まず、明治以降の教養主義の流れを概観。「教育-啓蒙」という基軸があり、対して「教養主義の裏通り」と言えるメディアの存在があった。文壇の主流から離れた人、プロレタリア文学者、社会主義者、前衛芸術家たち。

昭和初め、梅原北明(190146年)という人物を中心にしたネットワークがあり、彼らなりに教養についての考えた。軟派出版と呼ばれる変態性欲、猟奇犯罪、魔術、呪術、麻薬など、普通なら発禁になる書物を出版。法律の網をかいくぐり頒布した。『変態文献叢書』全9冊(1928年)内容見本は、当時ベストセラーの円本を批判し、自分たちの資料蒐集、内容の独自性、そして装幀、挿画、用紙、印刷、製本の贅沢さなど、「高級エロ」「愛書趣味」を誇る。限定会員500名募集、毎月180銭。

 円本や全集があらゆる本を網羅していると言っても、「不思議にも幾多知られざる裏通りや抜け道が残されて」おり、自分たちの興味の対象は「裏通りや抜け道を措いてはない筈です」。

 エロ本で儲けよう、ではない。民俗学、外国文献翻訳、江戸文学を渉猟し、漢字にルビをつけない。読者にある程度の教養・知識を要求する。良識や権威と無縁、書物を愛し、趣味道楽に徹した人たち。

(平野)寝る前に読んでいる。まだ少し残っている。毎晩おんなじところばっかり読んでいるような気がする。レコードが傷のところで行ったり来たり再生する感じ。寝てる。