2022年9月11日日曜日

北帰行

9.8 英国エリザベス女王逝去。あちらでは国葬に大きな反対論は出ないでしょう。

 知り合いの家の玄関ドアは風通しのために物を置いて少し開けたまま。その物は西洋人の胸像(高さ30cmほど)で、誰だかわからない。ご本人に会ったので尋ねたら「ピョートル大帝」、ロシアで買ったそう。皇帝がドアボーイ?

9.9 みずのわ一徳社主来神、ビール乾杯。社主笑い話、悪口を書いたら本人に伝わった。

相手「犬よりバカと書いたそうやな?」 

社主「ちゃう、犬の方が賢い、と書いたんや」 

相手納得。

 孫に宅配便。大相撲番付表もコピーして入れる。

 

 外岡秀俊 『北帰行』 河出文庫 990円+税




 外岡秀俊(19532021年)は東京大学在学中の1976年に本作品でデビュー(「文藝」同年12月号)。同年12月河出書房新社より単行本。第11回文藝賞受賞。77年朝日新聞社入社、文化部や海外特派員、編集局長を経て、2011年退社。ジャーナリスト、作家として活動。21年心不全で急逝。

 主人公・二宮は北海道の炭鉱町で育つ。炭鉱ガス事故で父死亡。中学卒業後、東京の町工場に集団就職。「事故」(工場での事故ではなく喧嘩)で左手の指欠損して、失職。飯場で大学生になった親友・卓也に出会う。彼は「爆弾」という言葉を口にする。二宮は故郷に帰る。卓也から恋人・由紀(二宮の初恋の人でもある)への手紙を託される。

 二宮は愛読する石川啄木の歌・日記を辿り、盛岡、渋民村、函館を訪ねる。由紀の住む札幌から小樽、釧路、そして故郷に。

〈私は明治四十年に妹を連れて海を渡った啄木という一人の青年と、敗戦直後に同じ航路を辿った父の姿を重ね合わせてみた。そして今、同じその航路を、ありふれた二十年を閲(けみ)した一人の男が辿りつつある。明治、大正、昭和と三代の男を結びつけるものはほとんど何もない。共通点と言えば、若く貧しく、食い詰めて職を求めるために北海道へ向かうということくらいだろうか。〉

 二宮は卓也に手紙を書く。自分の5年間のこと、旅のこと、由紀の現在(不明瞭に)。母と暮らす二宮のもとに卓也から手紙が届く。由紀の気持ちが自分から離れたことで計画に後腐れなく没頭できる、と。「計画」とは「爆弾」か? 二宮は東京に向かう。

 本書は若者を主人公にした小説であり、啄木評論。素晴らしい能力を持つ人なのでしょう。改めてご冥福をお祈りします。

(平野)